34 / 67

男の本性。③

 それがどう言うことかわかっているのかなと、啓太は思う。  したいのは山々。  清楚な顔の、なんにも知らない眞澄がどんな風に快楽に落ちるか知りたい。今日触れた肌に、自分を刻み込みたい。  気がつけばそればっかりの俺を、どうすれば悟られずにすむのか常に考えてる。  付き合ってるなら本性さらしちゃってもいいでしょ。  なんて、ふたりみたいなこと考えてる自分もいる。  でも、今ですら怯えてるのが判る。  セックスとなれば、痛がって怯えるのがわかっているのにうっかり手とか、出せるわけない。  出せるわけがないはずなのに。  「ベンキョー、する?」  チーズケーキの残りを口に詰め込むと眞澄は啓太の顔を上目にじっと見詰めてくる。きゅっとつり上がったアーモンド型の目がたっぷりの水と熱を湛えて揺れている。  それがどれ程啓太の理性をダメにするか、きっと判っていない。  指の長い、白い手がプラスティックのフォークを弄る。  「したい、です」  艶めいた唇が吐き出した甘い吐息。  テーブルを上半身が飛び越える。堪らなくなって唇が重なる。  まだケーキに口をつけていないはずの眞澄の唇は風味絶佳。漂う甘さに誘われる。  ちゅ。  リップサウンドが響く。  唇を離すと眞澄の顎が少し引かれる。  プラスティックのフォークが手元から落ちる。カランと小さく悲鳴する。  細く、熱持った体と、ネイビーのシーツが誘惑する。待てるなんて大言豪語しておいてこれだ。  テーブルを迂回して、隣に並ぶ。視線が絡む。伏せ目がちの瞳は濡れて戸惑うように揺れている。  昼間よりも、もっと触りたい。もっと、見たい。体を、色んな顔を。  ちゃんと言った筈なのに眞澄はやっぱりワイシャツ一枚で肌の色が透けている。そこから露出した首に触れる。隣の部屋で扉を閉じる音がした。粗雑な動きは翔太だろう。  三つ子の兄がコレに気づいたら、どうするだろう。乗り込んできて茶化すだろうか。  また、唇が重なる。  唇で眞澄の下唇を挟む。微かに、眞澄の体が緊張する。それを、首筋に触れる手で宥めた。  おずおずと体がほぐれ、脱力して鼻からの吐息が顔に触れる。  くち、くちゅ  舌を口の中に挿入(いれ)るとまた、ぴくんと体が反応する。キスだけだって、こんなにビビってる。  ビビってるのに、口の中はじんわり濡れる。あとからあとから唾液が滲んで、眞澄は重なった上下の睫毛を細かく震わせる。  「っあ」  シャツの上から、左の乳頭を押し潰す。ふるふると震え、白い肌は真っ赤に染まる。  「ただの、前戯だよ」  「前戯……」  「好きだから、触りたい、気持ちよくしてあげたいって触ってんの」  くにくにと数回親指の腹で揉むと、小さな粒が指の下で自己主張してくるのが判る。眞澄は唇を突き出して、眉間にシワを寄せて何かに堪えてる。  「……後は、挿入のための準備、だな」  「そう、にゅう」  爪の先で弾くと眞澄は高い声で啼く。足がもぞもぞと動いて、股間が柔らかく膨らんでいるのが判る。  耳まで真っ赤にして、感じてる。  それに煽られる。  かぱと口を開けて、耳殼に軽く歯を立てる。こりと少し芯のある感触にまた、眞澄の体は堅くなる。  「好きだ」  シャツの胸に、白い手がふたつ、しがみついている。  重なった瞼は少し涙に濡れている。  「もっと、触りたい」  胸が閊えて本音だけが競り上がってくる。  これは、ヤバい。  待てると言ったのに、泣かせたくないなんて言ったのに、紳士ぶってこのザマ。  「ふぁあっ?」  薄いシャツの下、小さな乳首が布を押し上げて勃起してる。口を閉じ、中で唾液を蓄える。たっぷり溜まったそれを、舌に絡めて、シャツ越しに小さな突起を舐めた。布の少し埃っぽいのは屋上で風に吹かれたせいかもしれない。  あのときの眞澄が、頭の中をちらつく。  両手でシャツを開いて、自分から胸を曝した姿。その危うさに気がついたときの反応。  待てるなんて何を根拠に言ったのだろう。    

ともだちにシェアしよう!