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男の本性。④

 シャツに唾液が染みて、そこだけ変色する。白から、肌に張り付いて、透けて乳首と乳輪の色が見えてしまっている。  ―――挿入の準備って、なに。  啓太のシャツにしがみついて頭の中は混乱する。  挿入、は、入れるってことだ。差し込むってことだ。  何を?どこに?  ナニをアソコに。  啓太の舌は濡れてて熱い。  触れるたびにじんじんと股間が痺れる。昼間のひっかかれたときみたいな電撃じゃなくて、そっと撫でられた時の細かな電流が、胸の奥にあるキュンとする場所を刺激して、それと同時に股間にまでじりじりと焦らすような甘い痺れを齎す。  それに、下っ腹の奥が触れられる舌の感触の度に切なく疼く。  前立腺。  陽樹に言われた名称を思い出す。ケツの穴の中にある場所らしい。はじめは感じにくいって言ってた。  感じにくいって何?感じやすいって何?  気持ちよくなっちゃうこと?だとしたら、この切なく疼くもどかしい感じは、感じてるってことなんだろうか。  「んく、」  「なに、考えてる?」  唇でシャツ越しに乳頭を食んだまま、啓太が呟く。  その吐息が先っぽの自分では何も感じないと思っていた場所を撫でて、切ない疼きが増した。  「わ、かりませ……」  息が熱い。  唇が離れて、舌が、シャツの上からまた、乳首を押し潰す。  ずきんっと明確に股間に向けて電気が走る。押しつぶされたのは乳首の先端なのに、裏筋あたりがひくひくと震えるのが自分でも判る。  判るけど、  「俺、なに、考えってんだろ、」  気持ちいいのか怖いのか切ないのか苦しいのかよくわからなくなって頭の中は飽和状態だ。  胸に潜んだ啓太がじっと、眞澄を伺っている。  いつにない、熱が、その目にともっている。  柔らかい表情で気遣いの塊みたいな顔で、どう見たって優しい先輩のはずなのに、その奥に眞澄の知らない表情がある。  啓太が口を開く、その唇の隙間からシャツよりも白い歯が覗いている。    「っあ、」  こりと、前歯が尖った乳首を引っ掛けた。  びくと、体が伸びあがる。足の間で脈打つものが腫れたように熱を持つ。  「イイって顔、してる」  上下の前歯が小さく腫れた乳首を挟んで、啓太が呟く。  啓太の目に自分はどう映っているんだろう。  切なくて上手くできなくなった呼吸に胸を上下させながら、啓太を見返す。  上目づかいの啓太は少し幼く見えるけど、陽に焼けた肌はやっぱり精悍で、優しいことを知っているのに、このまま乱暴にされたらどうなるのだろうと考えてしまう。  それが、願望なのか、啓太の本性を垣間見ているからなのか、眞澄は知らない。  ただ、  ―――イイって、顔。  気持ちイイ顔。  啓太から見た眞澄はそう映っている。  証拠のように性器は勃起して、隠しようもないくらい。腹の奥のむず痒いのは熱を持った、重く甘怠いもどかしさに変わり、無意識に、密やかにフローリングの床に蟻の戸渡を擦り付けていた。  「おれ、キモチイイ、のかな」  このもどかしい焦れ焦れした感じが性感なのか自信がなくて、でも、身体反応は完全にそれを示していて、だとしたら自分は初めての体験でこんな風に感じてしまっていて、それはすごく恥ずかしいことなんじゃないかと不安になって、、  「わかんない、です」  結局何もかも判らなくなった。ただ、キュッと啓太のシャツにしがみつく手を強めた。  短く吐き出した啓太の吐息が、濡れたシャツに触れて熱い。  「お前、ホント、煽り過ぎ」  眞澄の胸から顔を上げた啓太が笑う。歯をむき出しにした笑顔は、いつもの啓太のものだ。  なのに、心臓がいつもの3倍も、4倍も大きく、早く脈打った。  「先輩……?」  その原因がどこにあるのか探ってみて、気が付いた。  「なぁ、眞澄。俺はほんとに、お前が好きだよ」  キュッと潜めた眉がどこか苦しげで、堪えるように細めた目の中に見たことのない凶暴さがあったせいだった。

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