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頭、馬鹿になる。①

 理性のタガなんて外れてしまえばあっという間にはじけ飛ぶ。  下唇を噛んで、ふるふると睫毛を震わせながら何かを我慢しているさまは控えめに言ったって、  めちゃくちゃにしたい。  本当は小さく尖った乳首にむしゃぶりつきたい。  舌でこね回して、味わって、びくびく腰震わせながら戸惑う眞澄を見たい。でも、啓太はそれをしない。  今焦らされて震える姿が官能的なのもある。  でもそれ以上に  ―――ほんと、ヤベぇ。  本当に歯止めが利かなくなりそうだからだ。  歯は引っ込めて。唇だけで。舌先が触れないぎりぎりのところ。  さっきより膨れた乳首が触れるか触れないかの場所にある。真っ白い肌の上でそこだけがやや濃い色がかったピンク色をしている。  それを、舌で転がしたら、眞澄はどんな声を上げるだろう。  どんな顔をするだろう。  でもそれを見てしまったら本当に止まらなくなる。  ゴムはない。  まだ、先の話と思っていたし、ローションもない。  隣の部屋はそれこそその手のものが大量にあるだろう。素直に慈悲を乞えばあの兄貴は抑えきれない笑いに口角をひくひくさせながらいらない玩具付きで分けてくれるに違いない。  それだけは勘弁願いたい。  でも、キスをしてしまったら。  こんな風に肌に直で触れたら余計に。  もっとしたい。  感じてる眞澄に触れるだけで、その性感が伝播するみたいに興奮する。  普段、クールビューティーとか、生意気だとかそんな風に言われて、素直に表情を変えたりしない眞澄が俺の前ではこうなんだ。  「んゥ……」  吐息の合間に色付いた喘ぎを漏らす。  核心に触れない愛撫が、一層焦らすのか、きめの細かい肌の表面が毛穴を収縮させて粟立っている。  「ふ、ふっ……」  切なげな眼がまた理性を吹き飛ばそうとする。  いっそ唾液で濡らしてしまおうか。  一回射精()しちゃえばそれで、できるのか。でも、初めてでそんな雑な扱いを受けるのは正直どうなんだ。  というか、本当に好きな相手にそんな、何の準備もないその場の雰囲気でセックスするなんて、どうなんだ。  ―――好きだから、堪えきれなくなるのも、あるけど。  「ンっ」  舌先で乳頭を撫でる。ぶると、眞澄の全身が震え、鳥肌が濃くなる。  「ん、はぁ……」  舌に転がして唾液を含ませるとひくんひくんと胸を跳ねさせながら、眞澄が顎を引く。  顎を引いて、立てた膝がしらをこすり合わせているのが腹の下の動きで感じられる。  ———勃起してんだなあ。  多分、  なんて、自分だって同じなのに思う。  眞澄の下は中学指定ジャージだ。  紺色に白のサイドライン。  普通の公立校だったらしいから結構ダサい。ぴっちりめで、勃起したら、すぐ形がわかる。  多分、じゃない。  はっきり、自分の腹の下で、涙目になりながら勃起してる。  唇を外して、真上から眞澄を覗き込む。  キュッと丸め込まれた下唇は前歯に噛み締められて皺が寄っている。痛そうで、それをなめて宥めたくなる。  戸惑ってる。  ふるふると肩を震わせ、上半身を曝したままで戸惑っている。  左手を、自分の股間に挟んで。  右手は、俺に掴まれたままで。  そうして隠せば、自分の性的興奮は啓太に伝わらないと思っているんだろうか。  「せんぱい、」  違うなと、思う。  伝わっていることがわかっているから、こうして濡れた目で惑いながら助けを、教えを乞うている。  啓太には、甘い誘惑にしか見えないのだけれど。

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