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長尺バット⑤

 「それは本気で聞いてる?からかってる?」  翔太の声に怒気はなく、嘲りも不遜もない。  「えっ、と、本気です……」  翔太の反応を伺いながら自分の言葉を反芻する。  ―――あ、また変なこと口走った。  気が付いても撤回なんて出来なくて、ただ俯いた。  見下ろした先に自分の、指がある。  「……まあ、いいけど」  沈黙をなんと解したのか判らないが、将太は気にする風もなくベッドに仰向けに寝転ぶ。勢い付いた表紙に捲れた裾から引き締まって白い腹が覗いていた。  そこに、赤い、痕がある。  ハーフパンツのウエストに挟まれて。よくみなければ見落としそうな程低い、位置に。  ―――これっ、て。  キスマークだ。  幾ら鈍い眞澄でも、自分も体験したことがあれば、忘れないし、すぐに思い至る。  しかも、その、位置は。  下生えの、辺り。  「もっと下にもあるよ」  見たい?  にやにや笑いながら翔太は見せつけるようにウエストを更にずり下ろす。ギリギリ見えてしまいそうな場所にまでキスマークは濃く鮮やかに残っている。  「いや、」  見てはいけない禁色に触れたような心地がして、眞澄は目を逸らした。そんなところに付けた相手は、翔太のアソコまで全部、見たんだ。  そんなとこまで見せる相手なんて、不特定多数いるはずはなくて、十中八九優太であることは明白な、事実で。  心臓が早鐘を打つ。直視など出来なくて目を逸らしたまま、口に溜まった唾液を、小さく飲み込んだ。  「……食べちゃいたいくらい可愛い」  「え。」  言葉の意図が掴めずに眞澄は翔太を見やった。半分ずり下ろして性器の付け根が見えた状態の下着を気にも止めず、翔太は真正面の天井を見ていた。  「って、言うじゃない」  「あ、はい」  「でも、実際喰っちゃったら、もう2度と会えない。話も出来ないし、その体に触れることも出来ない。」  第一、ガチのカニバリズムは犯罪だしね。  声は笑っているのに、その目は真っ直ぐ天井を向いている。その目が、目蓋に塞がれる。  「でも、食べちゃいたいくらい可愛いし、1つになっちゃいたいくらいイトオシイから」  イトオシイ。  心臓がきゅうきゅうして、触って欲しくて触りたいのは、イトオシイ、なんだろうか。  「まあ、食っちゃうよね。部分的に下の口からだけど」  目蓋を閉じたまま、ふひっと笑った拍子に肩が跳ねた。その振動がベッドを伝わって眞澄の尻も揺らす。  ーーー下の口から……部分的に……?  「ケツ穴でチ○ポ喰っちゃうよねって話」  「あ、ハイ」  そこに繋がるんだ……。  自分の顔が熱を持つのがわかる。赤く染まって頭の中沸騰しそうになる。  「そんなわけだから、ケツからチンポ食った結果……」  「うあ、」  翔太の手が眞澄の手を引いて、再びベッドに転がされる。横にならんだ翔太の顔は眉の形が啓太に似ていた。  「初めてはケツの穴裂けるかと思うくらい痛かったよ」  にっこり笑ってそういうから、スッと血の気が引いていったのがわかった。  「しかも、啓太の長尺バットじゃ初心者の眞澄はどうなっちゃうんだろうね?」  キシシと意地悪く笑いながら、再び負い被さる体はしながある。  「練習しといた方がいいかもよ?」  股に滑らされた指が柔く肉にめり込んだ。

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