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第2話
「あ、純、待って。どこ行くの」
純はベッドをぴょんっと下りて、タタタッと小さな足で部屋の外へ走っていった。慌てて捕まえれば、キャッキャッと楽しそうに笑って、また走り出そうとする。
「あーー! はなしてーー!!」
じたばたと仰け反る純を抱き上げて、服を探しに純の部屋へ向かう。歩き出すと諦めたのか大人しくなって、俺の胸にキュッと掴まった。
(っ、かわいい……)
小さな温もりが途端に愛おしくなって、ぎゅっと抱き締めれば、鬱陶しそうに押し返してじたばた暴れ出す。
「いっ、痛い痛い痛い、噛まないで。こら、純!」
痛いと叫んだのが面白かったのか、ケラケラ笑って何度も噛みついてくる純の顔を剥がして顎を押さえた。
そうこうして、純の部屋のクローゼットを開けるが、そこには当然、高校生サイズの純の服しかなくて。いくつか探したあと、小さめの純のシャツを見つけて、とりあえず着せてみる。
半袖だが、小さな純には長袖になっており、裾も引き摺るくらい長い。首回りもぶかぶかなので、いったん脱がせてから全体を軽く縫っておく。
ズボンがないが……、隠れるからまあ良いだろう。
「あれ? 純?」
少し目を離した隙に純の姿は部屋になくて、慌てて廊下へ飛び出す。と、リビングの方からガタガタと音がする。何をしているのか急いで確認に行くと、純は観葉植物の鉢を揺らして遊んでいた。手は土だらけだし、床もそこら中、土で汚れている。
「はぁ~、もう勘弁してくれよ。こら、純!」
純はびくりと肩を揺らすと、おどおどしながら、ふい~と目を逸らした。どうやらいけない事だと分かっててやったらしい。
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