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第3話
「こういうことしちゃだめでしょ」
「――――」
「ごめんなさいは?」
「……ごめん、なさい」
純は俯いて、指先をもじもじと弄りながら、小さな声でぽつりと謝った。若干掠れた涙声で言うものだから、可愛くてつい許してしまう。
「もうしないでね」
「――――」
「純、返事は?」
「わか、った」
よしよし、と頭を撫でて先ほど縫った服を着せる。
「寒くない?」
「うん」
「良かった。ご飯作るからいい子に待ってるんだよ」
「はぁい!」
純は元気に返事をした後、タタタッと走って椅子によじ登る。
「ごっはん、ごっはん」
自分の目線よりも高いテーブルをペタペタ叩きながら、脚をパタパタ揺らして食事を待つ姿はとても可愛い。
(何食べるかな……オムライスでいいか)
冷蔵庫から食材を取り出して、玉ねぎと鶏肉を刻む。それらをフライパンで炒めながら、ハウスキーパーの田中に電話をかけた。
「あ、子供服を買ってきてもらいたいんだけど、今日来れる? ……できるだけ早めで。……うん、午後でも。え、サイズ? えーっと、小さめの……いや、赤ちゃんではない……うん、いくつか適当にお願い。……ああ、助かるよ。ありがとう」
電話を切って、フライパンにケチャップ等の調味料を加えてさらに炒めると、美味しそうな匂いが部屋に広がる。
「おじさん、ごはんまだ?」
ぴょこっとキッチンに顔を出した純は目をキラキラさせながら聞いてくる。きっと匂いに誘われて待ちきれなくなったのだろう。
「……まだだよ。危ないから向こうで待ってて」
「はぁい」
ぴょんぴょん跳ねながらリビングに戻る純を目で追って、思わず大きな溜め息をもらす。
そんなに老けて見えるだろうか。調理器具の金属部分に映った自分の顔をまじまじ見るが、小さくてよく見えない。
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