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第4話

(まあ、いいや)  フライパンをもう一つ取り出して卵を焼き、先ほどのチキンライスをのせて、トントン、と包んでいく。 「よし」  いつもは半熟卵だが、今は純が子供なので、念のため火をよく通しておいた。美味しそうに出来上がったオムライスの皿二つと、飲み物をお盆に乗せてリビングに戻る。 「おなかしゅいた……」 「お待たせ」 「僕のごはん!?」  椅子の上に立ち上がって覗き込もうとする純を座らせて、テーブルにお盆を置く。 「そうだよ。オムライス。純好きでしょ?」 「すきーー!」 「椅子がちょっと低いね。ちょっと待ってて」  部屋から厚めの本を数冊持ってきて、椅子の上にバランスよく重ねる。これで純もテーブルの高さが合うだろう。  デザート用の小さなスプーンを渡して、自分も隣に座った。 「いただきまぁす! あちっ」 「あー、ごめんね。ふーふーして食べて」 「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」 「…………そろそろ良いんじゃないかな?」  いつまでも息を吹きかけて冷ましてる純にそう言えば、恐る恐る口に運ぶ。 「おいしい?」 「うん。……おじさん、ふぅふぅして?」  そう言って純がスプーンを渡してくるから、それを受け取って少し考える。 「……おじさんじゃなくて、お兄さんって言ったらしてあげるよ」 「おにぃ、さん……?」 「うん」 「おにぃさん、ふぅふぅして……?」 「いいよ」  オムライスを冷まして純の口に運ぶ。あーんと大きく口を開けているが、それでもとても小さくて可愛い。ほっぺたもぷにぷにで、開いた口を潰すように頬をムニッと掴みたくなる。もちろん、そんなことしないけれど。  パクパク、モグモグ、と一生懸命に口を動かしている姿にたまらなく愛おしさが込み上げる。 (はぁ~可愛い。いつまででも見てられる)  純に食べさせながら途中、自分もオムライスを口に運んで腹に詰め込む。食べさせながら、急いで食べると、味も満腹感もあまりわからないうちに皿は空になっていた。

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