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第5話

「ごっちょうさまでした!」  手をパチンと合わせて、ケチャップまみれの口でそう言うと、ご機嫌で足をパタパタさせながらお水を飲む。 「おいで。歯磨きしようね」 「うん!」  歯磨きを終えて食器を片付けようと思ったら、インターホンが鳴った。おそらくハウスキーパーの田中だろう。  一応モニターで姿を確認した後、扉を開ける。彼女の両手に抱えている荷物を半分ほど受け取って、リビングのソファまで運ぶと、純がトコトコと寄ってきた。 「あら、とっても可愛らしい。お名前は?」 「……じゅんです。……おねえさん、だれ?」  純はお姉さんと呼んだが、田中は俺よりも十歳近く年上だ。俺のことはおじさんと呼ぶのに、田中のことは何故お姉さんと呼ぶのか、少々気にしながら、嬉しそうに微笑む彼女の代わりに答える。 「田中さんだよ。おうち綺麗にしてくれたりする人」 「たなかさん?」 「うん、純くんのお洋服を買ってきたのよ」  そう言って紙袋から服を取り出して広げた。 「これ! これがいい!」  車のイラストがプリントされたパーカーを手に目を輝かせるが、俺としてはネコ耳付きのフードがついたトレーナーを着せたい。 「じゅん~こっちは?」 「えーやだ!」  純は手に持っていたパーカーをぎゅっと抱き締めると、俺とは反対の田中の方を向く。 「……こっちの方が可愛いよ。純に凄く似合うと思うなぁ」 「こっちのがかっこいーもん。……あ、あひるさん」 「あーこれはね、純くんのトイレ」 「といれ?」  田中が箱から取り出したのは子供用の小さなおまるだ。 (こんなものまで……)

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