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第7章 3
じゅる、と先端に唇をつけて吸われ、クガミの身体が大きく跳ねた。
「ん……、お前の味がする」
イザナがクガミの陽物から唇を離し、舌なめずりをする。
整ったイザナの顔の前、鼻先が触れるほど近くに蜜や唾液で濡れそぼった陽物がそそり立っている光景は酷く淫猥だ。しかも、そのイザナの整った唇がたった今までクガミの陽物を咥え、愛撫していたとあれば尚更興奮するというもの。
「は、……ッ……ふ、……」
熱く悩ましげな吐息が零れ、クガミの腰が続きを望むように揺れる。ひたひたと、イザナの唇や高い鼻梁に昂ぶった物が触れる度に、クガミの背を弱い快感が走り抜けていく。
「そんなに焦らずとも、欲しいだけくれてやる」
クッ、と口角が上がったイザナの唇が、再びクガミの陽物をすっぽりと覆う。窄めた唇で竿を擦られ、舌でくびれた部分を舐められる。
ただでさえ気が狂いそうな快楽であるのに、その上イザナの指が竿の根元の二つの膨らみをやわやわと揉み、時折摺り合わせるように動くものだからクガミの中で快感が急速に膨れ上がっていく。
鈴口から蜜が溢れたそばからイザナにじゅるじゅると音を立てて啜られ、クガミは根元の方から快楽の奔流がせり上がってくるのを感じた。
「ひ、ぁ……ッ、も……無理、……あ、あぁあッ!!」
高い声が上がり、クガミの身体が大きく跳ねる。イザナに咥えられたままの陽物からはドクドクと白濁が吐き出されていく。
「ん……ッ、ん……――――ッは……」
決して美味しくはないだろうに、イザナはごくごくと喉を鳴らしクガミが吐き出した白濁全てを腹の中に収めてしまった。口の端に残った残滓を手の甲で拭うと、まだ足りない、といわんばかりに舌なめずりする。
「……お前が欲しい」
情欲に濡れた赤い瞳がクガミを射抜く。
クガミに覆い被さるイザナの身体はひんやりと冷たいままであるのに、その内側で熱が暴れ回っているのが触れている肌を通してクガミにも伝わってくる。
このままなし崩しに自分が抱かれる側になりそうな予感はあったが、イザナに熱のこもった瞳で見つめられ、冷たい指先で唇をなぞられると躊躇いすらも吹き飛び、クガミの内側に再び熱が生まれた。
「……ッ、くれてやるのは今日だけだ」
そう言って、クガミは始めてイザナに自分から口付ける。拙さの目立つ、ただ唇を浅く重ねるだけの口付けだったが、イザナを煽るには十分だったようだ。
イザナに唇を舌で舐められた次の瞬間には、舌がクガミの咥内に侵入を果たしていた。にゅるにゅると滑る舌同士を擦り合わせ、口蓋を舌先で擽られる。
がっつくような激しいイザナの口付けに、クガミは息苦しさを覚え胸を喘がせた。
「……ふ、…………こっちも可愛がってやる」
口付けの合間にイザナが笑う。つんとイザナの指が突いたのは、クガミの胸の頂で凝った小さな肉粒だった。
「ん、……ッ……ぁ」
イザナに肉粒に触れられた途端、むず痒いような刺激がクガミの背を駆け下りていく。普段気にしないように努めてはいるが、蔦に弄られてからというもの何かとそこが敏感になってしまっているような気がする。
くにくにと押し込むように弄られたかと思うと、肉粒を縊り出すようにきゅっと摘まれ、クガミはイザナに口を塞がれたまま身体をびくつかせた。
イザナの唇で口を塞がれていなかったら、きっと甘い声を上げてしまっていただろう。そんなことにならずに済んでよかったと安堵したクガミだったが、胸への愛撫はそれで終わりではなかった。
ちゅ、と音を立ててイザナの唇が離れる。息も絶え絶えなクガミは、濡れた唇もそのままにイザナを見上げていた。
と、イザナが自身の着流しの帯に手を掛けた。しゅる、と音を立て帯が解け、イザナの肌が露になる。
自分とは全く違う肌色の、男らしい体つき。それをクガミに見せ付けるかのように、イザナは着ているもの全てを取り払ってしまった。
クガミ同様に裸身になったイザナが、 クガミの首筋に唇を寄せながら囁く。
「食べてやるという約束だったからな」
そういえば、そんなことをクガミが蔦で嬲られている時に言っていたが、クガミはイザナがからかって言っているのだとしか思っていなかった。
(まさか……本当になるとは……)
人生何があるか分からないものだ、などと内心思っていると、つうっとイザナの舌がクガミの首筋を舐めた。
「ふ、ッ……ぁ……」
不意のその行為に、クガミは甘い声を溢す。普段の自分からは想像出来ない鼻にかかったような媚びの強い声がうろの中に響き、クガミは慌てて唇を噛み締めた。
「……声を殺すな。勿体無い」
イザナの指がクガミの閉じた唇を擽る。
「だが、……ッ、こんな……甘い声……ん、……ぁ……」
自分は、ヨキのように中性的な容姿をしているわけではない。そうであるのに、甘い声をあげるなど聞いている者は気持ちが悪いのではなかろうか。
もし自分が第三者としてこの場に居合わせたのならば、男の上げる甘ったるい声を聞いてもいい気分はしないだろう。寧ろ、気分を害する気がする。
だから極力声を上げないようにしているのだが、イザナはどうやら違うらしい。
イザナが擽るようになぞっていたクガミの唇を親指でゆるりと抉じ開けながら
「お前が甘い声を出したところで幻滅したりしない。俺がお前に幻滅する時が来るとしたら、その時はお前が俺を置いて死んだ時だ。だから存分に啼け」
と真剣な顔つきで命令をしてくるものだから、クガミの気が抜けた。
「啼く、かどうかは別だが……ありがとう……」
「別に礼を言われることでもないだろう。それより、続きだ。いい加減、俺も焦れてきた」
そう言うなり、イザナがクガミの右胸の肉粒をぱっくりと口で覆ってしまった。
「ふ、……ぁ……ッ!?」
濡れた音を立て肉粒がイザナに吸われる。舌先で転がされ、みるみるうちにそこが芯を持つのがクガミにも分かった。
ちゅ、ちゅっとわざとらしく音を立て舐られ、周りの筋肉ごと唇で食まれる。時折軽く歯を立てられると、クガミの腰がひとりでに捩れた。
「ひ、あぁ……ッ、あ……ん、んッ」
開いた唇から掠れたあえぎ声が零れる。裸身であるせいで、肉粒で感じてしまっているのが首を擡げ始めた陽物で丸分かりなのが悔しい。
上下の唇できつめに挟まれ、引っ張られる。痛みを感じるほどに強く引っ張られたかと思うと、慰撫するように優しく舐められ、もどかしいような快楽がクガミの下肢へと下りていった。
「こっちも可愛がってやらないと、不公平だな」
右胸を舐めしゃぶっていたイザナが、今度はクガミの左胸へとしゃぶりつく。
「んんッ……、あ……ッ……う……」
クガミは背をしならせ、頭を畳みへと擦りつけた。認めたくないが、たまらなくいい。
右胸の肉粒にしていたように、左胸の肉粒も唇に挟まれ引っ張られる。それと同時に、先ほどまでしゃぶられ敏感になった右の肉粒をイザナが掌でくりくりと転がし、二本の指で摘まれた。きゅ、きゅ、と強弱をつけ摘まれると、下肢へと響く微弱な快楽がクガミの中を走り抜ける。
気が付くと、一度吐き出したはずのクガミの陽物は、天井に向かってそそり立っていた。先からはとろとろと粘度の高い蜜が零れ、糸を引きながらクガミの腹の上へと滴り落ちている。
「胸だけで達するお前も見たいが……、それはまた次の機会にとっておくことにしよう」
イザナが愛撫していたクガミの胸から唇や手を離す。
「う、わッ!!」
また次の機会などない、と言おうとしたクガミだったが、唐突にイザナに両脚を持ち上げられ驚きの声へと変わってしまった。
肩や背はぺったりと畳みについたまま腰から 下を浮き上がらせるように持ち上げられ、クガミは腹部や胸部を圧迫される苦しさに顔を顰めた。
何をするんだ、と脚を持ち上げたままのイザナに視線で訴えかけるが、イザナはクガミの格好を愉しそうに眺めているばかりで離してくれる気配はない。
流されると決めたものの天井に向かって尻だけを高く上げる格好など、幾らなんでも屈辱的過ぎる。
「この、離――――っ、ひ……ぁッ!!」
クガミはイザナの手から逃れるために両脚をばたつかせようとしたのだが、つう、と尻の狭間を滑った感触が這い、暴れるどころではなくなってしまった。
見開いたクガミの視界に映ったのは、尻のあわいに顔を埋めたイザナの姿だった。
クガミの頭の中で先ほどの滑った感触と、彼の舌が結びつく。
「や、め……ッ、そんな、場所……舐め……ん、……く、ぁ……」
苦しげに、クガミは訴える。が、クガミの媚態で火の付いてしまったイザナがクガミの声に耳を傾けるはずもない。
ぬるつく舌が窄まりと会陰を行き来し、すべりをよくするためなのか唾液を垂らされる。それを何度か繰り返されている内に、気持ちの悪さしか感じていなかったこの行為にクガミは微かな快感を得始めていた。
「ひ、ぁ……ッ……あぁ……」
くにゅくにゅと、イザナの舌先が窄まりを突き、閉じているそこを抉じ開けられ、唾液を注ぎ込まれた。気持ちが悪いのに、ぞくぞくとした感覚がクガミの背筋を這い上がってくる。
(な、んだ……これ……)
気持ちが悪いのに、それが気持ちが良い。自身でも変な感覚に、クガミは戸惑っていた。
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