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第7章 4

 舐められているうちに僅かに解れ始めた窄まりに、イザナの舌がずぷ、と差し込まれる。 「う、ぁ……あ、ぁッ……」  痛みは無かったがイザナの舌が内壁を掻き分け、唾液を中に注ぎこんでは抜け出ていく感覚は奇妙で、クガミの全身が総毛立つ。  差し入れられた舌がぐるりと円を描くように舐めまわしたかと思うと、今度は中を小刻みに揺するように動かされる。  クガミ自身の意思とは関係なしにその部分がひくひくと蠢き、イザナの舌を締め付けた。  全身が熱い。背や腹の上を汗が流れ落ちていくその感触すら、今のクガミには快感を呼び起こす材料となる。 「ひ、ぁ……あぁッ、あ……あッ」  深く差し入れられた舌がぬるると内壁を擦りながら抜け出ていく感覚に、クガミの唇からは断続的な喘ぎが零れた。  涙で潤む視界の中、クガミの後孔を舌で解していたクガミが眉間に皺を刻んだまま顔を上げる。 「ああ、くそ……もう少し慣らしたかったが、我慢がきかん」  乱暴に言い放つと、イザナはクガミの両脚を下ろした。そうして、舌で解したクガミの後孔に指を一本宛がう。 「……あ、ぁ……ッ、ん……」  唾液のぬめりを借り、イザナの指はたいした抵抗もなくずぶずぶとクガミの中に飲み込まれていった。根元まで飲み込んだ指を中でぐるりと掻き混ぜられ、クガミの身体が震える。  すぐさま、指は引き抜かれたが、クガミに呼吸を整える暇すら与えず、今度は二本になったイザナの指がクガミの中へと押し入ってくる。  入り口付近で浅く抜き差しされ、焦らすようにゆっくりと中を擦られた。内壁が、はしたなくイザナの指に絡みつき、奥へと誘うように蠢く。  気が付けば、イザナの指が二本から三本になり、クガミの中を掻き回していた。  ずる、と引き抜かれていく指を惜しんで、中が切なく収縮する。そんな自身の体の反応に、クガミはまだ戸惑っていた。 「もう、いいだろう。……入れるぞ」  イザナがクガミの後孔に猛りきった自身の陽物を宛がう。  脚の間から見えてしまったイザナのそれの大きさに、クガミの腰が引ける。無意識に逃げようとしていたクガミの身体をイザナが足首を掴んで引き戻すと、ぐっと腰を進めてきた。 「う゛、ぁ……ッ、く……あぁ……」  強烈な圧迫感に襲われ、クガミは苦悶の声を上げる。  慣らしたといっても、不十分。しかも、イザナのものは大きく、太さもある。笠の張った先端部分が後孔の縁をめい一杯に押し広げ侵入してくる。その部分が裂けてしまったのではないかと思うような痛みに襲われ、クガミの身体が強張った。 「息を、吐け……ッく……、食い千切られそうだ……」 「無理……い、うな……ッああ!!」  言われて出来るのならばとっくにそうしている。そう出来ないから困っているのだ。クガミは痛みに顔を顰めながらイザナを睨み付けた。  イザナも、きついクガミの中に痛みを感じているのか、整った顔の眉間には皺が刻まれている。そういった表情も様になるから、なんとなく腹が立つ。  クガミは腰を引いて逃げようとする。が、イザナにがっしりと腰を掴まれているためにそうすることも出来ない。寧ろ、ぐっと密着するように引き寄せられ無理矢理イザナのモノを飲み込まされていく。 「あ゛、……あぁ……ッ」  内臓を押し上げられているような圧迫感と後ろをみっしりと埋め尽くす異物感に、クガミは呻いた。  少し進んでは、引き戻され、内壁が引き攣れる様な痛みを訴える。このままではどうにもならないと思ったのだろうイザナが、クガミのすっかり萎えてしまった陽物を掴むと、五本の指でねっとりと扱き始めた。  鈴口を抉るように指が動き、先端から根元まで丹念に擦られると痛みよりも快感の方に意識がいってしまう。その隙に、イザナがずず、と腰を進めてくる。  無理だと思っていたのに、気がつくと根元近くまでイザナのモノを咥え込まされていた。  全て収めきったイザナが、クガミの上で甘い吐息をつく。クガミの視界に映っていたイザナは、これ以上にないくらいに幸せそうな笑みを浮かべていた。 (……ッ……)  ずくり、とクガミの胸が疼く。そんな顔は、卑怯だ。痛かったではないか、と文句をぶつけるつもりでいたのに、幸せそうに微笑まれると、言えなくなってしまう。 「思った通り……、お前の中は温かいな」  イザナがクガミの身体に覆い被さったまま呟く。 「ッ……、アンタのは、硬いのに冷たい……。変な感じだ……」  自身の内側に他人がいるだけでも不思議であるのに、さらにその感触が自分のモノとは違うことにクガミは慣れる事が出来ない。 「人とは違うからな。……俺も、お前と同じ身体に生まれたかった」  つい先ほどまで幸せそうに微笑んでいたイザナの表情が曇る。  クガミ自身、神になりたいかと問われると答えは“否”だが、短命かつ不可思議な力は一切使えない人間からすれば、神は羨望の対象だろう。そうであるから、人間が神になりたいと望むことはあれど、神が人間になりたいと望むことはない、と勝手に思っていた。  が、クガミの身を貫くイザナは珍しい思考の持ち主らしい。 「……人間よりも、神の方が便利だろう?」 「そうでもないさ。縛りが多い分、不便かもな」 「へぇ……ッ、あ……、ん!! 急に、動く……な、ぁッ!!」  そんなものなのか、とクガミが思っていると、埋められたままだったイザナが動き出した。ずるずると内壁を擦りながら抜け出ていき、笠の張った部分まで抜けたかと思うと今度は縁を巻き込みながら先ほどより深い場所まで穿たれる。  折角薄らいでいた異物感と圧迫感がクガミを苛む。が、それ以上にある一点を擦られると思考すら蕩かす強烈な快感に襲われる。 「ここ、だな?」  クガミの反応で目敏くクガミの感じてしまう一点を見つけ出したイザナが、笠の張った部分や先端で執拗に攻め立ててくる。 「あ゛、あぁッ……ッ、ああッ!!」  がくがくと身体が跳ね、内壁が媚びる様にイザナの陽根に絡み、奥へと誘うように蠢く。喉が仰け反り、唇が震えては喘ぎばかりを吐き出した。  がつがつと、貪られるように腰を叩きつけられる。最奥を突かれ、ずるりと勢いよく引き抜かれ内壁ごと引っ張られる感覚は気持ちが悪いのに、気持ちが良い。  クガミの中を蹂躙するイザナのモノは冷たいのに、クガミの手を繋ぎとめるように握り腰を振るイザナの視線は爛れてしまうのではいかと思うほどに熱い。 「クガミ……ッ、……俺の、巫子……ッ」  名前を呼ばれた瞬間、胸が甘く疼き、クガミの中がイザナを強く締め付けた。こんなにも、自分の名前を情熱的に呼ぶ人物をクガミはイザナ以外知らない。  強く求められているという事実が、クガミの心に空いた空虚を埋めていく。が、そう簡単に素直になれる筈もない。 「違……ッ、ひ、あぁ……ああッ――――ッ、あぁ!!」  否定を口にするも、弱い部分ばかりを狙って擦られまともに言葉が紡げない。一突きごとに吐き出したい欲求がクガミの中で膨れ上がっていく。  イザナの律動が次第に余裕がない早いものへと変わっていった。クガミの中に我が物顔で居座っているものはこれ以上ないくらいに膨張し、脈動すら感じられる。  イザナの荒い息遣いが、クガミの頬に当たる。  律動の合間に、イザナがクガミの額に口づけた。それだけで、ざわりとクガミの背を快感が走り抜ける。  ああ、もう駄目だ。  クガミの体が絶頂を予感してがくがくと震えた。 「ひ、っ……ぁあ――――ッ、ああぁあっ!!」  背をしならせ、瞳を見開き喉をさらしながらクガミは達した。陽物からは、漏れ出るように白濁が吐き出され、とろとろと竿を伝い落ちていく。  達した余韻できゅうっ、と内壁がイザナのものを引き絞る様に蠢き、イザナの表情が快楽で歪んだ。 「く、……っ……ぅ」  イザナが低く呻き、クガミの上でぶるり、と身体をふるわせる。クガミの中をイザナが吐き出した白濁が濡らしていくのを感じながら、クガミは意識を手放した。

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