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第1章ー4

 座っていた椅子ごと後ろに下がりクガミから距離を取ったヨキが、可愛らしい顔の眉間に皺を寄せクガミを睨みつけていた。 「もー……、守人の宿舎で飲めばいいじゃん」  ヨキの言う事はもっともだ。時には深夜に巫女の警護をしなければならないこともあり、巫女付きの守人には占殿のほど近くに小さな宿舎が与えられている。簡易ベッドや食事を作るためのかまどなども置かれていて、きちんと休憩を取るならば宿舎に戻ったほうが余程いい。  しかし、クガミが宿舎に戻ろうとしないのは、ヨキの側に少しでも長く居たいからである。  ヨキがクガミのことを口うるさい幼馴染か、兄貴分のようにしか思っていないのは理解している。それに、どれだけクガミがヨキに想いを寄せようとも、ヨキが巫子であるかぎり、いつかは神のもとに番(つがい)として捧げられる日がくる。それが何時なのかは分からないが、恐らくそう遠くない未来にその日はやってくるだろうことは何となく感じていた。  だからといって、クガミの性格上馬鹿正直に自身の気持ちを口に出すのは難しい。 「……断る。こうやって茶を飲みながら、お前も見張れる。いいこと尽くめだ」  クガミは、真面目くさった返事で本心を隠しながら肌に突き刺さるようなヨキの視線を涼しい顔で受け流す。そうして、まだ温かい薬湯をズズ、と啜った。

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