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第23話 五月雨に惑う(9)

 パッと盛り上がって、すぐに冷める。なんとなく、俺はそう思ってたんだけれど、どうも、その考えは、だいぶ甘かったようだ。  土屋さんは、ゴールデンウィークを過ぎても、俺たちの教室に突撃してきては、廊下にたむろする女子や、うちのクラスの女子たちに撃退されていた。まぁ、その相手をしている彼女たちも、かなりのもんだと思うんだが。  なんというか、女子に守られてる俺って、どうなの?とも思う。それを言うと、ヤスは「男冥利につきるね」とニヤつくし、佐合さんは、ただ生温い視線で彼女たちのほうを見やるだけ。  このことを、自分の部屋で勉強しながら電話越しに柊翔にぼやくと、一瞬無言になったと思ったら。 『……傍にいてやれなくて、ごめん』  思いの外、落ち込んだ声が返って来た。  ゴールデンウィークは、やっぱり大学の剣道部の合宿だったり、バイトがあったりで、結局、戻って来なかった。それを申し訳なく思ってるのか、携帯での電話やSNSでの連絡はマメにくれている。特に、春休みの一件があったせいかもしれないが、かなり気を使ってくれてる気がする。  さすがに、俺も子供じゃないんだし、こうして頻繁に連絡をくれてることを考えれば、どうこう言うつもりはなかった。……会えないのは、正直、寂しいけど。 「何言ってるんだよ。俺も一応、男だってこと、忘れてない?」 『わかってても、そう思うんだから、仕方ないだろ』  少し拗ねたような声に、俺もクスリと笑いながら、教科書のページをめくる。もうすぐある、中間試験の試験勉強をしながら、電話をしている俺。余裕がありそうかもしれないが、実際は、そんなことはない。本来なら佐合さんやヤスと、図書室で勉強して帰りたいのに、件の女子たちのせいで、落ち着いて勉強もできないのだ。だから仕方なく、昼飯を食べながら、佐合さんに教えてもらったりしてるんだけど。 『もしかして、そろそろ中間試験か』 「う? うん。そう」 『わからないところとか、あるか? 大丈夫か?』   柊翔はなんだか、随分と心配性になった気がする。その声の響きに、少しだけ優越感を覚えてしまう。柊翔はこんなにも俺のことを想ってくれてる。そう感じることができるから。 「大丈夫、大丈夫。明日、佐合さんたちと勉強する約束してるし」  高校の図書室ではなく、高校の近くにある市立の図書館の自習室が穴場だというのを、佐合さんが聞きつけてきたのだ。どうもリニュアルしたばかりで、かなり広いらしい。それを伝えると『俺たちの時は、ボロボロすぎて自習室すらなかったから、利用したこともない』と、驚いていた。 『そういえば、中間もそうだけど、もうすぐ三者面談じゃないのか?』 「ああ、うん」  中間が終われば、続いてあるのが三者面談。柊翔もすぐにそれに気付いたようだった。俺はチラリと思い出したくない相手……俺の父親の顔が浮かび、自然と顔を顰めてしまった。

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