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第7話 春の嵐(7)

 亮平と会うのは、高校一年の冬以来。久しぶりに会った亮平は、相変わらず背が高く、そして以前にも増して、顔つきが精悍になった気がした。亮平は俺の顔を見て、一瞬、驚いた顔をしたが、とても優しい顔で微笑んだ。 「久しぶり。もしかして、柊翔?」  亮平から、自然に柊翔の名前が出た途端、俺は顔を強張らせてしまった。それに気が付いたのか、亮平も心配そうな顔で見つめてくる。 「何か、あった……」 「あ、馳川、雑誌あったか?」  亮平の後ろから、シルバーフレームの眼鏡をかけている男性が顔を出した。亮平よりは背が低いけれど、俺よりは少し大きい。でも、柔和な感じの顔立ちが、亮平とは好対照かもしれない。 「あ、朝比奈先輩」 「……知り合い?」  なんだか、二人の間が微妙な空気になった気がするのは、気のせいだろうか。先輩のほうが、少し心配そうに亮平の顔を見ているような気がする。 「え、えと。ゴメン、またね」 「ちょ、ちょっと待てよ」  俺は亮平の言葉を聞かず、雑誌を棚に戻すと、後ろの先輩に頭だけ下げて、急いで書店から出た。なんだか、今日は逃げてばかりだ。  ヤスに言われたファストフードの店は、ようやく列がなくなっているみたいだ。カウンターに立ってメニューを見る。柊翔の店でナポリタン食べたかったなぁ、と密かに思いつつ、俺はいつも頼むヤツに決めた。 「ダブルチーズバーガーのセット、飲み物はコーラで」 「それと同じのもう一つ」 「あ、俺も」 「えっ」  振り向くと、亮平と眼鏡の先輩らしき人が、俺の後ろに立っていた。亮平は少しムッとした顔、先輩のほうは苦笑いしながら俺を見下ろしている。 「なんで」 「なんで、もないだろ。せっかく会ったんだから。あ、金は俺が出す」 「ちょ、ちょっとっ」  亮平は俺の言うことなど聞かずに、さっさと財布を出す。 「お、馳川、俺も奢って」 「朝比奈先輩は、自分で出してください」 「なんだよ。冷たいなぁ」 「……チッ」  亮平がなんだかやりこめられている。そんな姿に、俺はびっくりして、二人を見比べてしまう。柊翔と仲良くしている姿を見たのは二人がまだ中学生くらいの頃。亮平にも、こんな風に親しくする人がいるんだ、と思うと、ホッとした。 「ほら。要、先に行って席とってろ。俺たちは後から行くから」 「う、うん……」  亮平にそう言われると、俺は素直に頷くしかなく、二人を残して席を確保しに向かった。

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