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テスト週間ということもあり、放課後になればいつもは聞こえてくる部活動の賑やかな声やざわざわとした生徒の声はない。
生徒たちは自室か図書館で勉強してるんだろう。
誰もいない教室で一人、紅葉は机に勉強道具を広げて黄昏ていた。
ひんやりする机に頬をくっつけ、シャープペンシルをカチカチさせて遊んでいれば、靴音がかすかに聞こえた。時間帯を考えれば風紀委員の見回りだろう。
今年度始まってから初めての前期考査。綾瀬川学園は前期後期制であることからテスト数が三学期制の学校よりも少ない。そのぶん範囲が広くなるため勉強時間はあるというのに毎回泣く生徒が続出している。
専攻する科によっては終わる時間が異なったり、芸術科専攻の場合は二時間ぶっ通しでのデッサンのテストがあるのだ。
「紅葉君見ーけった」
けらけらと笑いながら教室に入ってきた神原は七竈の席にゆったりと腰掛けた。
「お久しぶりでーす。神原いんちょー」
「ハイハイ久しぶりぃー。それで、紅葉君は何してたノ?」
「勉強ですよぉー」
「紅葉君ほど勉強が似合わない子もいないよネ。……それにしてはノートがまっさらだけど」
勉強を始めてから二時間くらいは経っているが、全くと言っていいほどやる気が湧かず、ノートは真っ白な状態。端っこの方にはぐじゃぐじゃとミミズが這った文字が落書きされている。
「この落書き何?」
「祝詞 」
「……何故に祝詞チョイス」
パッと頭に浮かびあがるのが祝詞しかなかったのだ。特に言うような意味はない。
「俺が特別に勉強教えてあげよっか」
キラッとウインクをした神原に苦笑を漏らす。
見回りの最中じゃなかったの? 肩を竦めた神原に頷いた。
校則も規律も甘いわりに、成績には意外と厳しい。自分のことは自分でやる。つまり授業にでないでテストで悪い点数を取ってもそれは自業自得、自己責任の問題だ。
「紅葉君は何がわかんない?」
「英語かなぁ」
「え、意外。英語とかバリバリできそうだけど」
「僕純日本人だし。海外行く予定もないし、喋れなくていいと思うの」
「その言い分はできない人の言葉だネ」
英語とか国語と同じくらい簡単だけどなぁと仰る三年生主席のスパルタすぎる教え方に涙目になりながらもやりとげた。
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