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039*白乃瀬家*
大量の仕事とテスト勉強に板挟みにされ、そのうえ実家からは早く帰ってこいと毎日のように催促がくる。紅葉は疲れ果てていた。
「くっそだるい」
もはやキャラ作りなんてやってられるか。
そして今日、三日間行われるテストを全て終えた紅葉は気分転換に屋上に来ていた。
フェンスにもたれかかりながら青い空を眺める。雲一つなく空高い青色を綺麗だなぁと鑑賞しながら、ゆったりと時間が過ぎていくのを感じた。
「家には帰りたくないしぃー? 学校にも行きたくないんだよなぁー」
どうしようか、と一人心地に呟く。
やらなきゃいけないことがたくさんありすぎて、どれから手をつければいいのかわからない。
今日くらい、休んでもいいだろうか。否、駄目だ。いくら副会長の宮代が帰ってきたとはいえ、会長職の仕事が溜まりまくっているのだから。
「……疲れた」
メガネを外して眉間を揉みしだく。
最近、疲労がきちんと取れない。睡眠不足なのもきっとあるだろう。それにしたって、体がだるすぎる。
そろそろ戻ろうかと思ったとき、携帯が鳴った。メールならあとから確認して返信すればいいが、どうにも着信は鳴り止まない。
「……もしもし? どうしたん蒼兄が電話なんて」
電話の相手は実家に住む兄の一人だった。
元気にしてるか、勉強頑張ってるか、など当たり障り無い会話から始まり、なかなか本題に入ろうとしない兄にやきもきしながらも返答をしていく。
「え……おばあ様が戻ってこいって……? でも、それは週末の話じゃないのぉ?」
ようやっと本題に入ったのかと思えば、また帰省の催促。今まで父親が電話を寄越し、それとなく帰省を促してきていたのだが、まさか兄に電話を寄越させるなんて。それほど切羽詰まっているのか。
どうやらさっさと実家に帰ったほうが良さそうだ。また帰省を先延ばしにしたら今度こそ身内の誰かが学園にまでやって来かねない。それだけは避けたいものだ。
どうやら今週の土曜日にある夜会の準備をするから早く帰って来い、というらしい。迎えはすでに出しているというのだから嫌になる。
「……わかったよ。迎えが来たら帰るから」
了承した途端「ありがとう。じゃあまたね」と返事も聞かずに通話を切った兄は相変わらずだった。三番目の姉のことしか頭になく、口先だけ完璧な一番目の兄。
一番目も二番目の兄も、三番目の姉も大好きだ。もちろん弟も大好きである。
しばらく携帯の画面を見つめ、気分転換しようにも気が逸れてしまった紅葉は踵を返して屋上を後にした。
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