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突然のことだった。
「お前!! お前なんかが、親衛隊なんかがいるから、紅葉は自由になれないんだ!!!」
肩を掴まれ、振り向きざまに力強い拳で右頬を殴られる。
「隊長!!!」
「優嬉ちゃん!?」
一緒に歩いていた桜宮と摂津は驚いたように後ろを振り返る。
殴られて床に尻餅をついた水嶋は驚きと痛みで目をぱちくりと瞬かせ、自身を殴った生徒を呆然と見つめた。
件の転入生、日之太陽。行く先々で問題を起こしている生徒だ。一生徒からすれば、関わり合いになりたくない生徒第一位。生徒会長や副会長の親衛隊からも目をつけられている厄介者。
なぜ、殴られたのか。なぜ殴られなければならないのか。
「お前!! いきなり何するんだよ!!」
二人がかばうように水嶋の前に立つ。
日之の後ろには、戸惑い目を白黒とさせる逆巻と黒埼がいた。慌てて止めようとするも、日之は聞く耳を持たない。
桜宮と摂津が何か声を荒げているが、頬の痛みと余りの熱さによく内容が入ってこない。軽く混乱の渦中にいた。
「あれ、会計様の親衛隊じゃ……!?」
「ちょ、しかも隊長の水嶋だろ!」
「また親衛隊がなんかしたのか?」
「何があったんだ?」
「あの一年生がいきなり水嶋に殴りかかって」
「水嶋様になんてことを!」
周囲がなんだなんだとざわめく。野次馬が集まり始めた頃、ふと視線を巡らせば日之と視線が交わった。
あぁ、なるほど、と。
水嶋の日之を映す瞳の色が冷たくなる。
「……君は、白乃瀬様に恋しているの?」
「っ! うるさい!! うるさいうるさい!!」
カッと顔を赤くして、水嶋に再び殴りかかろうとしたときだ。
ざわついていた野次が一気に静まり返り、水嶋の背後にできていた人だかりが左右にザッと分かれた。
「先輩……? 先輩どうしたの!?」
そうして場面は白乃瀬の登場に至る。
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