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第3話

そして14日。 広瀬がマンションの宅配ボックスを開けると、思った通り、ザラザラと中身が出てくる。 どれも東城が誕生日の時よりは小ぶりな箱だ。数は今日の方が多い。手から落ちそうになるのを苦労しておさえながら部屋に運んだ。 東城はまだ帰ってきていないようだ。 しんと静まり返ったリビングで、ローテーブルに箱を置く。乱雑に置いたつもりはないが、無造作に積み重なっている。わざとではない。 贈り主を見ると、聞いたことのありそうな親戚の女性の名前が多い。 だが、知らない名前も多い。それはそうだ。バレンタインデーなんだから。女性が男性にチョコレートを贈る日。 全部、今のところは荷造り用の包装紙の色合いだが、中身は、デパートで見た、あの煌めくチョコレートなのだろう。いや、東城は甘いものはそれほど食べるわけではないから、チョコレート以外で、工夫されているのかもしれない。 その日、東城は、遅く帰ってきた。 片手に紙袋を持っている。どうやら職場でもチョコレートをもらったようだ。東城は広瀬にただいまと言い、ローテーブルに積みあがった箱をちらとみて、そのまま浴室に向かった。

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