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第6話
その夜、広瀬は、うとうとしていて、はっとなって目を覚ました。
身体をおこす。隣では東城がぐっすり眠っている。広瀬が起きたことには気づいていないようだ。
もしかして、もしかすると、東城は、あのチョコレートを自分へのバレンタインのプレゼントだと思ったのだろうか。
だから、あんな変な顔してたのか。
気づかなかった。
でも、チョコレートなんてあんなにいっぱい貰っているのに、俺からも欲しいって欲張りな人だ。しかも、たいして好きでもなく、積極的には食べもしないチョコレート。
広瀬はもう一度横になり、もぞもぞと布団にもぐった。彼の肩に額をあててみる。深い呼吸だ。怒っているわけでは無さそうだ。
それから目を閉じて思った。
欲しいなら欲しいと言えばいいのに。黙っているのも広瀬には謎だ。
でも、食べたいのなら、用意するまでのことだ。
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