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第7話
今日は、16日だ。
帰ってきた東城がキッチンに行くと、カウンターの上の大理石台の上に小ぶりで濃厚そうなチョコレートケーキがおいてあった。
「これ、何?」と東城は尋ねる。
広瀬は、白いワイシャツのまま腕まくりをしてキッチンに立って夕食の準備をしていた。
彼は、分厚い鍋つかみを手に、オーブンから大きなグラタンを取り出している。表面のチーズとホワイトソースに焼き色がついてぐつぐつと音を立てている。いい香りだ。
「カニグラタンです」と広瀬は言った。
「ああ、美音子さんのカニね」と東城は答える。
東城の姉の美音子が冷凍のズワイガニを送ってきたのだ。貰いもののおすそわけだそうだ。それをお手伝いの石田さんがグラタンにしてくれた。
「いや、カニグラタンはおいしそうだからいいんだけど、そうじゃなくて、このケーキ、なんだよ?」
広瀬は、ダイニングの机の上にグラタンを置き、グラスを並べながら東城に答える。
「チョコレート。食べたがってたじゃないですか?」
東城は、わざとらしくため息をついてみせた。
それから彼も袖のボタンをはずし、少しまくり上げると、冷蔵庫からサラダを取り出した。
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