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第170話 唯side

すると案の定頬をぷっくりと膨らませた玲緒がクッションを放り投げてこっちに歩いてきた。 「あの…的場さん」 「…はい?」 的場は何も知らないかのようににこにこと微笑んで玲緒に向かった。 「え、と…初めまして、逢坂玲緒…です。」 「ふふ、初めまして的場です」 そして的場の腕をやんわりと俺の腰から外して今度は玲緒が手を握ってきた。 「唯は…俺の、なんです」 ほら、とでも言うように玲緒自身の手と俺の手を持ち上げて薬指にキラキラと輝く指輪を見せつけた。 かわいい゛ んーっと的場を睨んでいるが全然こわくない。 あんまり効果はないぞと教えてやりたいが、それはそれで可愛いから黙っていることにした。 「そうだったんだ…!意地悪しちゃってごめんね」 そう言って今知ったような素振りをして申し訳なさそうに言う的場。 玲緒は満足したようで俺にえへへと笑いかけてきていた。 折原は茶番やってんじゃねえ、とでも言いたそうな冷めた目で俺たちをみていた。 もちろん玲緒は気づいていないけど…。 * 「玲緒くん、これ手伝ってくれる?」 「あ、はい!」 昼食の準備は折原と玲緒がやってくれるというので俺たちはそれを見守ることにした。 「やっぱり玲緒くんって可愛いね。さっきの見た?俺に指輪なんか見せつけちゃって…あーもう可愛い」 「当たり前だろ。それに、お前に見せつけてきた指輪は俺のとペアだ。」 そんな会話をしていると玲緒がエビフライや野菜が乗ったお皿を運んできてくれた。 「…唯、あんまり的場さんといちゃいちゃしないでね」 玲緒はお皿を運び終えると俺の耳に小さな声でそういった。 ぽっと頬を染めていて、きっと恥ずかしいのだろう…。

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