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第172話

「結局それ着るのか?」 「…別に唯が選んだからとかじゃないからね」 そう言って唯を軽く睨んだのに、唯は笑いながら俺の耳元で「可愛い」って言った。 もうさ!耳元で吐息混じりにそんなこと言わないでほしい…!!!! 「じゃあ的場、着付けしてやってくれ」 唯がそう言うと折原さんと話してた的場さんはニコニコしながら俺たちのほうにやってきた。 「うん。じゃあ玲緒くん向こうの部屋で着替えようね」 「…うん」 そんな的場さんの言葉に小さく頷いて部屋を移動した。 「浴衣、これ…です」 「綺麗な浴衣だね、きっとよく似合うよ!」 笑顔でそう言って、俺の手から浴衣を受け取り着付けさせてくれた。 「はい、出来たよ。」 そう言われたので、鏡の前でくるくると回って自分の着ている浴衣を確認した。 改めて人が着ているのを見ると柄がはっきりと見えてとても綺麗だった。 「わぁ…すごい………あ、あの…ありがとうございます的場さん!」 頭を下げてお礼を言うと彼はいえいえと言ってまたもやニコニコしていた。 「唯に見せに行っておいで、きっと喜ぶよ」 的場さんのその言葉に胸の鼓動が早くなった。 唯は俺をみてどう思うかな…。 少し不安になりながら的場さんの言葉に小さく頷くと、彼は笑顔で手を引いてリビングに連れて行ってくれた。

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