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第173話
「唯…どうかな?」
リビングに入ると唯はソファでコーヒーを飲みながら折原さんと何かを話しているようだった。
唯の前でくるくるとまわって袖をみせるために腕を広げた。
「…綺麗だよ」
唯が俺の腰に腕を回して引き寄せられた。
ぽすっと唯の腕の中に簡単に収まってなんだか少し悔しく思う自分もいる。
「唯も浴衣…着てね?」
「………」
「ねぇ唯?」
「………」
「ねぇってば!」
「…分かったよ」
そう言って唯は立ち上がり、さっき俺も着替えた部屋に入っていった。
リビングには俺と折原さんの2人。
折原さんと2人っていうのは初めてかもしれない…。ちょっとだけ緊張するなぁ。
「玲緒くんは浴衣が似合うね」
にこりと微笑みながら折原さんはそう言ってくれた。
「ほんとですか!嬉しいなぁ…!あ、折原さんは浴衣…っていうか今日の夏祭り行きますか?」
そう聞くと折原さんは「あはは」と苦笑いしながら首を振った。
「今日はこの後仕事だから行けないんだ」
「あ、そうなんですね…ちょっと残念です」
「だから唯と一緒に楽しんできてね」
「はい!」
折原さんってすごく優しい人なんだなぁ、とても笑顔が素敵で爽やか。
ヤクザっていっても優しい人はたくさんいるんだなぁ…。
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