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第179話

「……ん、」 目が覚めると浴衣のままソファに寝転んでいた。 唯の家に帰りたいと言ってお祭りの会場から少し離れた臨時駐車場に歩いていって、そこから唯の車に乗っていた。 だけど先程までの興奮も収まり途中で眠くなっているうちに寝てしまっていたようだった。 「起きた?」 なんとなく状況が分かって体を起こそうとするとテーブルの椅子に唯が座っていた。 唯は何かを飲もうとしていたようだったけど、手に持っていた缶をテーブルに置いて俺の方に来てくれた。 「ご、ごめん…運んでくれたの?」 「あぁ、別に良いよ…それよりさ、さっきの流れ絶対するんだと思ってちょっと期待してたんだけど……?」 さっきの流れ、っていうとやっぱりセックス?だよね…? 「ん…じゃあ…今からしよ……?」 玲緒は精一杯頑張ったつもりだった。 いつもならこんな風に誘うことはないし、とにかく恥ずかしすぎる…。 多分顔は真っ赤だしもしかしたら耳も赤く染まっているかもしれない…………。 「先シャワー浴びる?」 「っ!…ううん、後でいい!」 玲緒がそういうと唯は笑って頭を撫でた後、浴室の方へと行ってしまった。 別に今更だし…初夜ってわけでもない。 だけど心臓はこれでもかと言わんばかりに鼓動を早め、どきどきして胸が痛かった。 唾液を飲み込んで喉がカラカラに乾いているのに気が付いた。 テーブルにはさっき唯が飲もうとしていた缶が置いてあって、まだ未開封のままだった。 興味が湧いてきてプルタブを引いた。 プシュッという音とレモンの香りが広がった。 「あ、レモンだ。」 パッケージは見ないで開けたから何の味がするのかは分からなかったけど、飲んだらすぐにレモンだって分かった。

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