181 / 337

第181話 唯side

「…玲緒?」 シャワーを浴びて浴室から出るとリビングのテーブルに玲緒がべたっともたれかかっているのが見えた。 心配になって声をかけると一瞬ぴくっと体が動いてすぐに俺に抱きついてきた。 「あ、唯だぁ〜」 抱きついてきたと思ったら今度は体をすりすりと寄せてきて、ぎゅうっとされる。 心做しか顔が少し火照っているように見えた。 口の端には液体が溢れて零れていて、浴衣も少し濡れていた。 ……めちゃめちゃエロい。 「いい匂いする〜!」 玲緒は俺に抱きついたまま、くんくんと鼻を動かして頬を緩める。 体に当たる息がくすぐったい。 「………酒飲んだのか…」 テーブルをみると飲もうとしていたアルコール度数弱めのカクテルの缶は無くなっていて、それは玲緒の左手に収まっていた。 それを玲緒から取り上げて確認する。 「…全然減ってないし」 すると玲緒はいきなり涙を流し始めた。 「うっ、ひぐっ、うぅっ…」 「わっ、……なに?どうした?」 「ひっ、…ゆい、はぁってため息した…れお、ため息いや…!……怒られるのもいや!」 ごめんと謝りながら宥めているとジュースちょーだいとせがまれた。 それをダメだと言って渡さなかった判断は合ってると思いたい。 「ジュースくれないのもいや……」 玲緒は頬を膨らませて怒ったような顔をした。 すごく可愛い……。 とにかく移動させようと玲緒を抱き上げて寝室に向かう。 もう既にとろんとした瞳をして眠そうな玲緒をベッドの上に座らせた。 今度は着ている浴衣が気になるようで袖や布をむぅと言いながら引っ張り始めた。 ……やっぱり可愛い。 「……玲緒可愛い」 そう言って頭を撫でると気持ちよさそうに笑っていた。 「へへ、おれ可愛いよ〜!」 「…してもいい?」 「ん〜いいよ〜」 玲緒は分かっていないようだったけど、えへへと笑って俺にキスをしてきたので後で何か言われてもきっと怒られない…はずだ。 念の為、後で怒られるのは嫌だから仕事用で使うビデオカメラを起動させて部屋の隅に置いておくことにした。

ともだちにシェアしよう!