192 / 337
第192話
唯の家にあるものの中で俺が1番に気に入っている白い陶器のティーカップに甘い良い香りがする紅茶を淹れた。
その香りを胸いっぱいに吸い込んで、ドクドクと痛いくらいに鼓動する胸をなんとか落ち着かせようとしていた。
少しすると、スーツから青いシャツに着替えた唯がきて俺と向かいあわせの席に座った。
唯は俺が緊張しているのを察したように柔らかく笑って、緊張しなくても良いって言ってくれた。
「前に、俺が夢で魘されてた理由なんだけど玲緒に話しておきたくて」
「…うん」
*
唯side
俺には小さい頃からの幼馴染がいた。
名前は拓斗といって、明るくて社交的で頭も良かった。
あいつは仲間を大事にする奴で、誰かが喧嘩で殴られた、なんて聞いたら殴ったやつに仕返しに行くのが当たり前!っていうような人間だった。
「なぁ唯、人間ってさ案外狡くて脆い生き物なんだよ。」
「………拓斗はそんなことねぇと思うけど」
「俺こそ、その見本だよ」
学校からの帰り道で、拓斗はケラケラと笑いながらそんなことを言っていた。
俺には拓斗の言ってることがよく分からなくて、なんて返したら良いのかすら分からなかったから黙って聞いてるだけだった。
それから拓斗は少しずつ変わっていった。
ともだちにシェアしよう!