195 / 337
第195話
「だから玲緒に声をかけたのは俺自身の拓斗への罪滅ぼしみたいなものがきっかけ。」
「…そうだったんだ」
唯は始終苦しそうに、悲しそうに話をしていて見てるのが少し辛かった。
「顔も知らない奴に重ねられて嫌だよな…悪い。きっかけはそんな気持ちだったけど今、玲緒のことは本当に愛してる。」
「うん、俺も。…話してくれてありがとう」
唯は俺にこの話をするのを躊躇って嫌がった。それを話してくれのは俺のことを信じてくれたから。
……そう思ってもいいんだよね?
「唯はいつでも優しかったんだね」
「……優しくなんかない」
「ううん、俺は優しいと思うなぁ」
それまで視線を落としていた唯は俺から逃げるように席を立ってソファに腰をかけ直した。
「ねえ唯」
「………」
「ゆーいー」
「………」
「唯さん」
「……なに」
「そっちに行ってもいい?」
俺がそう言うと唯は動きを止めたあと、ほんの少しだけ首を縦に振った。
「ありがとう」
柔らかい笑顔を意識して唯に向けてから、俺も席を立ってソファに座っている唯の隣にそっと座った。
「唯のせいなんかじゃなかったと思うよ」
唯の肩に頭を乗せて俺はそう言った。
唯は相変わらず何も言わなくて、ただ黙って聞いてるだけだった。
「唯は優しいから全部背負おうとしてるんじゃないかな…唯が罪悪感とか俺のせいだって思うのも分かるよ、俺がもし唯の立場だったら俺もそう思っちゃうもん……。」
「………」
「唯は今まで一人で頑張ってきたんだね」
ともだちにシェアしよう!