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第199話
「ゆい〜、お風呂出たよ〜入って〜」
「…あ、おう分かった」
唯の大きめの服を借りて、リビングにいる唯に声をかけた。
唯はゆっくりと立ち上がってすれ違うときに優しい声で、ありがとなって言って俺の髪の毛にキスをして行ってしまった。
「〜!」
キスは嬉しいけど無駄にドキドキするよ…!
胸の中で一人、悶々としながらリュックに入っているテキストを取り出した。
流石に一週間近く勉強しないのはやばいよなぁ俺、受験生だし……。
絶対合格したいもん……!
それで一人暮らしするんだ!
そしたら今より頻繁に唯に会いに来れるし…。
よし、唯がお風呂に入っている間は少しでも勉強しておこう。
そう思ってテキストを開いた。
*
コトン、と目の前に透明なグラスが置かれた。
突然のことに驚いてパッと顔を上げると唯が隣に座っていた。
髪の毛は既に乾いていて、お風呂上りじゃないことはすぐに分かった。
時計を見ると11時を過ぎていた。
「わぁっ、ご、ごめん!」
「別に謝ることないだろ。玲緒は受験生なんだし…いつも邪魔して悪かったな」
そう言って唯は苦笑いをしながら謝ってきた。
「まだやるのか?」
「ううん、もう寝る」
「じゃあこれ飲んだら寝るか…お腹痛くなるからゆっくり飲めよ」
「ありがとう」
唯が作ってくれるココアは普通のものより少しだけ甘め。
それは俺が甘いココアが好きだから。
それをちゃんと分かって作ってくれている、ということに胸が温かい気持ちでいっぱいになった。
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