199 / 337

第199話

「ゆい〜、お風呂出たよ〜入って〜」 「…あ、おう分かった」 唯の大きめの服を借りて、リビングにいる唯に声をかけた。 唯はゆっくりと立ち上がってすれ違うときに優しい声で、ありがとなって言って俺の髪の毛にキスをして行ってしまった。 「〜!」 キスは嬉しいけど無駄にドキドキするよ…! 胸の中で一人、悶々としながらリュックに入っているテキストを取り出した。 流石に一週間近く勉強しないのはやばいよなぁ俺、受験生だし……。 絶対合格したいもん……! それで一人暮らしするんだ! そしたら今より頻繁に唯に会いに来れるし…。 よし、唯がお風呂に入っている間は少しでも勉強しておこう。 そう思ってテキストを開いた。 * コトン、と目の前に透明なグラスが置かれた。 突然のことに驚いてパッと顔を上げると唯が隣に座っていた。 髪の毛は既に乾いていて、お風呂上りじゃないことはすぐに分かった。 時計を見ると11時を過ぎていた。 「わぁっ、ご、ごめん!」 「別に謝ることないだろ。玲緒は受験生なんだし…いつも邪魔して悪かったな」 そう言って唯は苦笑いをしながら謝ってきた。 「まだやるのか?」 「ううん、もう寝る」 「じゃあこれ飲んだら寝るか…お腹痛くなるからゆっくり飲めよ」 「ありがとう」 唯が作ってくれるココアは普通のものより少しだけ甘め。 それは俺が甘いココアが好きだから。 それをちゃんと分かって作ってくれている、ということに胸が温かい気持ちでいっぱいになった。

ともだちにシェアしよう!