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第206話 唯side
「♪〜」
植物園を見てまわり終わったあと、玲緒はよほど気分が良いのか鼻歌をうたって助手席に座っていた。
昼食は植物園で販売している植物園特別ランチというものを食べた。
花や草木をイメージしたらしいメニューに、普段野菜を食べない玲緒も難なく野菜を食べられていた。
気が付いていなかったのかは分からない…。
けど、野菜を嫌う玲緒にしては珍しかったから今度家でもやってみようと心の隅で思った。
「この後何か予定ある?」
そう聞くとそれまで上機嫌だった玲緒はなぜか少し焦ったように首を横に振った。
「ご、ごめん…この後のことは何も考えてなくて……」
申し訳なさそうに下を向いて俯いている玲緒は今にも泣き出しそうだった。
なるほどそういうことか。
ならむしろ好都合だ。
「じゃあちょっと付き合ってくれるか?」
そう提案すると玲緒はキョトンした表情をしたあとすぐキラキラとした笑顔になった。
「うん、いいよ!」
玲緒が大きく頷くのを見てから、目的地へ行くためにゆっくりと車を発進させた。
*
「着いたよ」
そう言ってシートベルトを外しながら横を見ると、お腹いっぱいになった後にドライブをしていたからか少しだけ眠そうにしている玲緒がいた。
「はーい…運転おつかれさま」
そんな玲緒が可愛くて仕方ない、と頭の隅で思いつつも覚束無い足取りの彼の手を取りお店の中へ入った。
だんだんと目が覚めてきた玲緒は手を繋いでいるのに気が付いて、頬を赤く染めながら「もう大丈夫」と言って手を離した。
「ここ、何しに来たの?」
「ちょっとね」
訪れていたのは服やアクセサリーなどを販売している店だった。
この店はよく来る、という訳では無いが商品のデザインにはなかなか良いものがあるので気に入っていた。
アクセサリーのコーナーを見て回っていると玲緒も俺のあとを付いてきながら値段を見ては「ひっ」と小さく声を漏らしている。
それがなんだか可愛いらしくて、面白くて、思わず笑いが零れてしまった。
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