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第209話

「終わった………これ欲しいのか?」 「わっ…唯!別に、ただ見てただけだよ」 突然背後から声をかけられて少し驚きながら、口が裂けても服を見ながら唯に似合いそうだなぁなんて考えてたって言えないと心の中で思った。 「まぁ玲緒が着るようなタイプじゃないな」 そりゃ唯が着たら似合いそうな服なんだもん。 俺には到底似合わないし、着たとしてもどうせ唯の足元にも及ばないだろうなぁ。 そんな唯の言葉に少し落ち込みながら「そうだよね」と苦笑いをしながら続けると、唯は別の服を指して俺に見せてきた。 「こっちの方が似合う」 なんて言って楽しそうに笑っていた。 …なんだろう、こんなところまでかっこよくて好きすぎるって思っちゃう俺は末期なのかな。 唯の手をそっと重ねて自分の手と絡ませた。 これを見た女子高生なんかは恋人繋ぎ、とか言って騒ぐのかもしれない。 唯のことがすごく好き。 どうしよう、泣きそう。 「ゆい……大好きだよ」 普段なら人がいる所では手を繋いでこんなことを言ったりなんて恥ずかしいから絶対しない。 だけど、最近は恥ずかしいっていう気持ちも薄れてきて自然に言えるようになった気がする。 「可愛い………どうした何かあったのか?」 「別にないよ」 顔を片手で覆ってため息をついたあと、唯は繋いでいた俺の手を更に強く握って歩き出した。 だから俺もそれに答えるように握り返したんただ。

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