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第218話 唯side
「ごめんなさい…嫌なことさせちゃったよね」
緋水は先程より幾分か落ち着いた様子で俺にそう謝ってきた。
「謝らなくていい、そういえば父さんと母さんは?」
いつもは家にいるはずなのに、今は見当たらない2人のことを不思議に思ってそう聞いた。
「2人で京都旅行に行ってるよ」
そうだった。
俺の両親は結婚生活を何十年送ってきているが未だに仲が良く、毎年この時期に旅行に行っている。
小さい頃はついて行ったりしていたが、中学高校あたりになるとそういう機会はだんだん減っていった。
「いつ帰ってくるんだ?」
「明後日」
明後日か、その間は緋水のことが少しだけ心配でもあるけれど今ちゃんと話しておけば大丈夫だろう。
「緋水、困ったことがあったら俺に頼れ」
それを聞いた緋水は「でも、」と言葉を続けようとする。
だけどそれを最後まで言わせることなく言葉を被せる。
「大丈夫だから。絶対に俺以外の人間には頼るな、約束できるか?」
「う、うん…」
結構強引すぎたか?と言った後になってそんなことを思ったが、緋水が変な関係を持たないようになるならもうなんでも良い。
危ない目にはあってほしくない。
「そろそろ帰る…「やだ…兄ちゃん」
ふと見た時計の針はもう午前2時過ぎを指していて流石に帰ろうと思い、腰を上げた時だった。
横から服の袖をぎゅっと掴まれて緋水が瞳をうるうると泣き出しそうになりながらこちらを見つめていた。
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