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第223話

「あっ、逢坂くん!」 1日の授業を終え塾へ向かうために校門を出たところで名前を呼ばれて動かしていた足を止めた。 「これ、ありがとうすごく助かったよ」 振り向むいてみると、高柳くんが鞄から俺の渡したテキストを取り出して差し出してきた。 「役に立ったなら良かった」 それを受け取りリュックにしまうと高柳くんが隣にきて2人で歩き出した。 「一緒にいってもいい?」 「もちろん、いいよ」 4月から同じ教室になって高柳くんと話すようになったんだけど、話していると彼とは音楽や本、映画など様々な場面で共通の趣味をもっていることに気がついた。 お互い都合の良い休日には一緒に映画を観に行ったことだってある。……といっても1回だけだけど。 「そういえば逢坂くんがこの前読んでた本、ちょっと気になってたんだよね。どうだった?」 「この前……○○○?すごく面白かったよ、今度貸すから読んでみる?」 「そうそうその本!…あ、いいの?」 「いいよ、買うのもったいないし」 「じゃあ借りようかな」 「分かった、明日持ってくるね」 そんな話をしているうちにあっという間に塾についてしまい、2人の会話はそこで一旦途絶えた。 「2人ともおつかれさま」 「おつかれさまです」 玄関で優しい笑顔を浮かべて2人を出迎えてくれたのは(たちばな)先生。 橘先生は事務係でもあって、俺たちに国語を教えてくれる先生でもある男の人。 優しくてかっこいいし、俺たちに1番歳が近い先生であるのもあって生徒(特に女子)には人気の先生なんだ。 「今日は1階南教室だね、がんばって」 「ありがとうございます」

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