224 / 337
第224話
*
「ふぁあ…」
玲緒は全ての講義を受け終わり、次の電車で帰ろう…なんてぼんやり考えながら歩いていた。
「駅まで一緒にいってもいい?」
すると横から高柳がひょこっと出てきて玲緒にそう言った。
若干驚きつつもニコリとした笑顔を浮かべて「いいよ」と言うことにした。
2人で並んで歩く道はいつもより早く通り過ぎていくようにすら感じる。
そういえば唯、おにぎり食べたかなぁ…。
朝早そうだったからもう家に帰って休めてるといいけど。
「?…逢坂くん聞いてる?笑」
突然そんなことを言われてはっとする。
高柳くんはじーっと俺の方をみていて何か話していたようだった。
「ご、ごめん!なに?」
「ふふ、大丈夫だよ…何か考えてた?」
「ううん何も考えてないよ、ぼーっとしてた」
「そっか〜」
そんなことを言いつつも唯から連絡がないか携帯のディスプレイを何度も確認してしまう。
やっぱり忙しいのかなぁ…
「逢坂くんどこの駅?」
「あ、こっち」
高柳くんにそう聞かれて咄嗟に自分の帰る方向を指で示した。
「俺こっちなんだ」
すると高柳くんは苦笑いをしながら「真逆だね」なんて言って俺とは逆の方向を示していた。
「もう夜で真っ暗だし、送っていこうか?」
高柳くんはとっても優しい人らしい。
俺の家は高柳くんの家とは真逆のはずなのにそんな申し出をしてくれた。
俺が女の子だったらありがたくお願いして送ってもらっていたと思うけど、生憎俺は男に生まれてきた。
「大丈夫、俺も男だし!」
「…それもそうだね笑、じゃあまた明日」
「うん、ばいばい!」
ともだちにシェアしよう!