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第225話 唯side

「唯、もう一杯付き合ってよ〜」 家でのデスクワークを終えて特にすることもなかったので本家に顔を出すと珍しく若がいた。 酒を飲んだ若は相当機嫌が良いらしく頬が緩みっぱなしだ。 正直に言えばかなり面倒くさい。 もう帰りたい…。 * 「あれ、若だ〜!なんでなんで!今日はみんな本家に来て…何かあるの〜?!」 八坂が廊下を走ったと思えばその先には柔らかい微笑みを浮かべた若がいた。 走ってくる八坂に「こらこら」なんて言いながらもその表情は嬉しそうだ。 「用事があって来ただけだよ、それに八坂とはこの前も会ったばかりでしょ」 「ねえ若〜今夜飲みにいこ〜!」 「今夜か〜…澪が寂しがっちゃうかなぁ」 澪…って誰だ…新しく恋人でも出来たのだろうか。 「お願い若〜たまにはいいじゃん!」 「うーん……まぁいっか、じゃあお店は任せてもいいかな?」 「もちろん!」 どうやら八坂の要望通り、2人で飲みに行くことになったようだ。 そんな2人を横目に見つつ書類の整理をするために幹部室に入り、自分の席で参考文献などがまとめられているファイルを開いた。 書類にざっと目を通し、今までの文献を考慮しながら親父に提出する書類と破棄する書類を分別する。 しばらくその作業を続けているとだんだんと目が疲れてきて文字が文字に見えなくなってきた。 「はぁ…」 「ゆーいさんっ、ここのお店なんかどうかな!」 ソファに身を任せてぐたっともたれ掛かっていると横からドンッと衝撃を感じた。 薄らと目を開けると八坂がニコニコしながらスマホで飲みに行く店を俺に紹介してきた。 「あ?…いいんじゃねぇの」 そんな風に軽く流していると「もう!唯さんも行くんだからね!」と、やや強めの口調で言われた。 「……俺もか」

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