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第228話 唯side
「八坂の家どこだっけ」
「この前引っ越してただろ…確か………」
そう言って折原に言われた住所を車のナビに打ち込んで、再びハンドルを握った。
「若はマンションで良いよな?」
「あぁ」
***
「遅いぞ…って、あれ……」
眠っている八坂をおんぶしながら歩いて八坂が住んでいるという部屋の前まできた。
何気にここに来るのは初めてだなぁ、なんて思いながらインターフォンを押すとしばらくしてから爽やかな、いかにも好青年という人が出てきた。
「あ、憂聖…ってすみません!」
気持ち良さそうに眠っている八坂を見ると状況を理解したらしく、すぐに俺から八坂を抱き移してくれた。
これが飛鳥って言う人か…?
「夜遅くまですみません、酔って寝てるだけなんで心配しないでくださいね」
「本当すみませんっ、ありがとうございます」
その人は俺に何度も頭を下げてお礼を言ってきた。
大丈夫ですよ、と言って笑うとその人も少しは安心したようで先程とは違い、柔らかい表情になっていた。
「ちゃんと送ってきたか?」
「おう」
車に戻ると運転席で折原が煙草を吸いながら携帯のディスプレイをじーっと眺めていた。
「お前はもう帰れ、若は俺が送るから」
「呼び出しておいてなんだけど悪いから俺も付き合うよ」
「どうせ今日も玲緒くんいるんだろ」
その言葉がふと胸に刺さった。
そういえば、おにぎりのお礼も言ってないな…
「今日から学校だよ」
帰ったら電話…でもしてみるか。
もしかしたら緋水のことがあって無意識のうちに玲緒のことを考えないようにしていたかもしれない。
「そうか」
「やっぱ帰らせてもらうわ、悪いな」
そう言うと折原は「別にいい」と言って車をゆっくりと発進させた。
後部座席のシートでは若が気持ち良さそうに眠っていた。
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