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第232話 唯side
「会いたい……」
「また言ってるね…今日……21回目、かな?」
「わ、若っ!?…すみません」
本家で仕事をする時に自分が使っているパソコンが置いてあるデスクに凭れ込んで、ぽつりとそう呟いた。
後ろに誰かが来たことすら分からなかったが若が来ていたとは思わず、かなり驚いた。
「数えてたんですか…」
「半分は八坂がね、午後は飽きたからもういいや〜って俺にバトンタッチだってさ」
八坂、若になんてこと頼んでんだよ…。
てか若も仕事しなくていいのかな。
そんな意味を込めながらじーっと彼を見つめていると爽やかな笑顔が向けられるばかりだった。
「ねえ、会いたいって玲緒くん?」
「そうです」
「へぇ…今日暇だし呼んでもいいよ?」
「ダメです」
「えぇ、どうして?」
若が玲緒のことを気に入ったら確実に焼きもちをやくから、とは言えず口を閉じた。
「どうしてもです。それに若には澪さんがいるでしょう」
若には半年ほど前に恋人ができた。
名前は澪 さんといって、まだ子供だ。
詳しい年齢は聞いていないがおそらく中高生の年代だと思う。
1度だけ本家に遊びに来ていて、少し話したことがある。
澪くんはとても綺麗な子だった。
話すのが少しだけ苦手らしくて今はその練習をしていると若から聞いた。
「なんかずるいじゃん〜唯は俺の愛する澪に会っで話したことがあるのに俺は玲緒くんと話せないってさ」
それからも若は「会いたいなぁ」と駄々をこね始めた。
挙句の果てには地団駄を踏む真似までする始末だ。(もちろんふざけていると思うが…)
そんな若を横目に俺はパソコンに向き直り仕事を再開させた。
「…よし、決めた。これは命令だよ唯、玲緒くんに会うために彼をここに連れてきなさい!」
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