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第235話

プルルル…プルルル… やけにピンクで染まったお店の中で商品をじーっと見ているとポケットに入っていた携帯が音を鳴らして震え始めた。 特に相手を確認しないまま、通話ボタンをタップして耳に当てるとよく聞き慣れている声が流れてきた。 『もしもし、今ちょっと大丈夫か?』 「あ〜うん…大丈夫だよ」 唯がわざわざ俺に電話してくるなんて何か用事があるのかなぁ? 『朝は悪かった、何か用事だったか?』 「大丈夫だよ〜ただ…間違えちゃっただけ!俺の方こそごめんね」 なんだ、そのことか。 唯が気にしないためにも間違えたと言うと短く「そうか」と返ってきた。 『今どこにいる?』 「ショッピングモールだよ〜」 『今から本家に来るのは難しい、か?』 唯と会えること自体は嬉しいけど翔との好実ちゃんの誕生日プレゼントを選ぶ、という約束を破ることはできない。 「う〜ん、友達と約束しててちょっと無理かも…ごめんなさい」 なるべく唯が傷つかない断り方を頭の中で思い浮かべて言葉を並べた。 「大丈夫だよ、悪かった」 会えるのだったら、少しだけでも会いたかったなぁ。 *** 「これ可愛い!これならこっちゃんも喜んでくれるよね!」 そう言いながら翔が手に取ったのは可愛らしいリボンがついた薄いピンク色のくまさんのぬいぐるみ。 大きさは中くらいでいかにも最近の女の子が持っていそうなものだ。 「好実ちゃん、同じの持ってない?」 「持ってない!パパとママもぬいぐるみは買わないって言ってたし、これにする!」 「俺、ちょっと外出てるわ」 購入するために翔が会計に進もうとすると夏樹は少し疲れたように店の外に設置されているソファに座りに行った。 俺は翔を1人にするのがほんの少しだけ心配だったから一緒にいることにした。 * 好実ちゃんの誕生日プレゼント選びも終わり、休憩がてらショッピングモールに内蔵されているカフェに入った。 そこで、とある人物と出会う。 「あれ高柳くん?」 「わっ、びっくりした…逢坂くん」

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