263 / 337

第263話

「はい、どうぞ」 戻ってきた高柳くんの手には映画館での定番、ポップコーンと炭酸飲料があった。 「え、なにこれ?」 「何って…ポップコーンとジュース…あ、炭酸系飲めなかった?」 「いや、飲めるけど…いいの?」 「それなら良かった。うん、いいよ」 それを差し出され、受け取ると座席にセットした。 ポップコーンは塩バター味、ジュースはコーラ。 なんだか少し申し訳ない気がするけどありがたくいただくことにした。 「そろそろ始まるね」 「うん」 部屋がだんだんと暗くなっていき、音も大きくなる流れるのは広告。俺はジュースを飲みながら本編が始まるのを待った。 数分もすれば本編が始まりオープニングテーマが流れ出した。 (昨日あんまり寝れなかったからかな…ちょっとだけ眠くなってきちゃった) 映像はどんどん変わっていき、話の流れも進んでいく。そんな中、睡魔が襲ってきて映像が途切れ途切れに見えてきた。 起きてなきゃ……高柳くんに失礼だし。 でも、無理かも…。 そんなことを思いながら俺はゆっくりと意識を手放し、夢の世界へと誘われた。 * 夢をみた。 その夢の中では俺と唯が出てきた。 最初は2人で笑いあってたんだけど、途中で知らない人が唯の隣に立っていた。 顔は見えないけど、その人をみた唯は嬉しそうにしながら2人で歩きながら手の届かないところまで行ってしまう。 あれ、唯…?待って、行かないで 心の中でそう思ってもそれが夢の中の俺の口から言葉が紡がれることはなかった。

ともだちにシェアしよう!