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第270話

誰に相談したら良いのだろう。 その答えは見つからない。 玲緒は送っていくと頑なに譲らない高柳との勝負に勝って駅のベンチで一人ぼんやりと座っていた。 「………寒い」 室内で過ごすと思っていたため割と軽装備で来てしまったことに少しだけ後悔していた。 頬をかすめる風が少しだけ冷たく感じる。 これからどうしよう。 喉はイガイガして痛いし、家に帰る気にもならない。 笑顔で送り出してくれた葉月の顔を思い出すとその想いは尚更強くなった。 「俺、馬鹿みたいだな………」 みたい、じゃなくて馬鹿か。 とりあえず誰かに話を聞いてほしい。 そう思った俺は携帯を取り出して連絡先の一覧を眺めた。 連絡、してみようかな。 キーボード画面をタップして文章を打っていくこんな簡単な作業をしていると何故だか涙がポツリと流れた。 ……ていうか犯されてないのになんでこんなに悲しくなるんだろう。 『今、なにしてますか?』 『ごはん食べてごろごろしてたよ〜!LINEとか珍しいね、どうかしたの??』 すぐに既読がついて、メッセージを読むとあの人がご飯を食べてごろごろしているところがすぐに想像出来て思わず笑ってしまった。 『今からお家に行ってもいいですか』 『やっぱり何かあった??全然OKだけど俺の家分からないよね、迎えに行くよ!』 『駅にお願いします、すみません』 "何か"には触れずに返事をした。 なんて言ったら良いのか分からなかったし、LINEのメッセージで文字を打っているあいだにまた泣いてしまいそうだった。 (一人じゃなんもできない……) こういう時に自分の無力感や心の弱さを感じさせられる。 早く、楽になりたい。

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