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第274話
飛鳥さんは料理が得意じゃない。
前に八坂さんが楽しそうに笑いながらそう話していたのを思い出した。
「たくさん食べてね」
飛鳥さんが作ってくれたごはんは、とても美味しくてあたたかかった。
こんな俺のために作ってくれたのが申し訳なってくる。
八坂さんも食べたかっただろうなぁ。
「おいしかったです、っ」
「よかった、食器は後で片付けるから置いておいて良いよ」
「あ、はい…すみません」
飛鳥さんは俺が使った食器をキッチンに置くとすぐに戻ってきてくれた。
「憂聖 はね」
「ゆう、せい……」
聞き慣れない名前を自分の知っている人の名前に当てはめるが誰とも一致しない。
誰のことだろう……。
「あ、そういえば八坂さんって呼んでたか。あいつの名前は八坂 憂聖 っていうんだよ」
「…かっこいい名前」
「名前だけはね…笑。憂聖は割とめんどくさがり屋な所もあって普段、俺が言わないと食べたお菓子の袋を片付けなくてうだうだ言ったりするんだけど今日は何も言わずに突然家を出てってさ、玲緒君を連れて帰ってきた時は驚いたよ」
「……」
「憂聖もちゃんと兄貴分になれてるのかなって嬉しくなった」
「……八坂さん、優しくて良い人です…一緒に水族館とかパンケーキ食べてくれたり」
「それ、憂聖から聞いたよ。嬉しそうに話してた、また行きたいって」
そんなことを言ってくれてたんだ…と嬉しくなっていると飛鳥さんが「また一緒に行ってあげて」と笑ってくれた。
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