275 / 337
第275話 憂聖side
「唯さん今どこにいるの」
『あ?』
「あ?じゃないでしょ、どこって聞いてるんだから場所を答えて」
『幹部室だけど…用件は何?』
「分かった。すぐに行くから伝える必要はないって今俺が判断した」
『はぁ……?』
まだ話を続けそうな唯さんとの通話を切り、車を思いっきり走らせた。
もし日本中に交通違反を取り締まるレーザーが張り巡らされていたとしたら俺は今すぐにでも捕まってしまうんだろうが、そんなことを言ってる場合じゃない。
正直に言えばとてつもなく腹が立っている。
玲緒くんの聞いた話からすれば誰だって唯さんが浮気をしていると疑うはずだ。
でも唯さんが玲緒くんを溺愛しているのは知っているし、ありえないことだとも思う。
溺愛しているからこそ、そもそも玲緒くんが不安になるような行動はしないと思っていた。
が、そうでもないらしい。
それに加えて玲緒くんの同級生のことが気になる。
気になるというかもう無理、本当は消してやりたいくらいに考えている。
玲緒がされたことを聞いているだけで憂聖はその時のことを想像し辛かったのだろうと胸が酷く痛かった。
愛している人以外との接触なんてただの苦痛だと憂聖は思う。
玲緒が可哀想で仕方なかった。
*
やがて本家に到着し、車の収納を部下に任せ幹部室へと急いだ。
なるべく息を整えていらだつ気持ちを落ち着かせる。
冷静に、怒らない怒らない。
「唯さん、話があるからきて」
そう言いながらドアを開けると驚いた顔をしていた折原と、仕事をしていた唯さんがいた。
ともだちにシェアしよう!