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第276話 憂聖side

「今まで何してたのか、ちゃんと言って」 「…仕事してたけど」 「今日のことじゃなくて、最近」 そう言うと少し考えるように目線を逸らす。 嘘、ついてるのかな。 「玲緒くんのこと大切に思ってんの?」 「思ってるに決まって……」 「仕事なんてそこまで忙しくなかったでしょ」 唯さんが仕事をしていたのは送られてくるデータから分かるが、本家にはあまり顔を出してなかったはず。 仕事が忙しくて、は玲緒には使えても憂聖には使えない嘘だ。 「答えないのか答えられないのか、もうどっちでもいいけどさ、思ってるより面倒なことになってるよ」 玲緒くんのことは俺の口からは言えないし、言うつもりもない。 だけど玲緒くんのことも知らずに呑気でいられる唯さんにじわじわと腹が立った。 「…どういうことだ」 「俺からは言えない、許可もらってきたわけじゃないし」 玲緒くんは苦しそうだった。 なのに唯さんはそれも知らずに仕事なんかしちゃってさ……そんなの玲緒くんが可哀想だ。 「何があったんだよ、早く言え。いくら八坂でも怒るぞ」 その言葉が胸の隅に引っかかる。 「なんでっ、なんでそんなことも知らないんだよ!怒る?ふざけんなよ!あんたがこんなに甘ったる匂い付けてる間に玲緒くんは…っ!」 憂聖も気が付いていた、甘く香る匂い。 いつもの唯とは真逆のその匂いに憂聖の怒りは増していった。 ただただ気分が悪い。

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