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第280話
「俺は、唯さんとちゃんと話をした方が良いと思ってる。」
「で、でも…っ」
「分かってるよ、唯さんと話すのにはまだ気持ちの整理ができて無くてちょっと追いついてないんだよね」
その言葉に小さく頷く。
自分で何が整理出来てなくて…とかはよく分からなくて、とにかく唯のことは考えたくなかった。
これからどうしたい、とかどうするべきなのか、とか考えたくないことばかりが目の前に立ち塞がっているような気がして…そこから逃げるように考えることをやめた。
「別に意地悪なことするつもりじゃないんだけど…なんで唯さんに会うのが嫌なの?」
なんで、それは…自分では分かってる。
やっぱり俺は逃げてばっかり。
「拒絶されるのが…こわい、から」
「拒絶…?」
「汚い、もう要らない、俺より良い人を見つけた、別れて……そう言われそうで、こわい」
唯には他にも相手がいる、ということを知って悲しくなったと同時にこわくなった。
別れなきゃいけなくなるとか、飽きられたって想像すると胸の奥がズキズキと痛んで悲鳴を上げた。
必要とされなくなるのがこわい。
「そんなことないよっ、唯さんは絶対そんなこと思ってないし玲緒くんのことが大事だって思ってる、!」
「…そんなの、分かんないよ…っ」
「もう要らないって思ってるなら会いたいなんて言うはずがないよ、まだ玲緒くんを大事に想ってる。」
「…っ、ひっぐ…や、だ…俺、だって唯と、いっしょに、いたい…っ」
「うん…大丈夫だよ、きっとまた二人で幸せだなって思える時は来るよ」
そのためにも明日、唯さんに会いに行こう?と八坂さんは俺を抱きしめ、撫でながら優しい声でそう言った。
「…いっ、いく……っ」
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