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第290話

「ふぁ………あ、…唯」 目を覚ますと俺はベッドに眠っていた。 いつもの感覚に安心感を覚える。 隣には唯も眠っていて大体の様子から、いつの間にか眠ってしまったのかなぁと想像する。 気がつけば唯の腕に力強く抱きしめられている。 「……こわかった、」 大好きな唯を見たらなぜか大嫌いになった彼と共有した時間を思い出した。 とても嫌だったし逃げ出したかった。 あ、そういえば携帯…… また連絡が山のようにきているのだろうか。 そう考えればゾワゾワっと寒気が酷かった。 いっそ携帯なんて、なくなれば良いや。 あんなもの、見たくない。 俺には必要のないもの。 「ゆい………」 俺を抱きしめていた腕に少し力がこもった気がした。 「……大丈夫、何もこわくない」 頭の上から優しくて安心出来る声が聞こえて俺の髪の毛を撫でた。 髪の毛を撫でられて不快感が体をはしる。 一瞬体が反応してしまったけど、大丈夫、これは大好きな唯の手。 「ゆい、もっと……ぎゅってして」 「あぁ」 横になったまま唯にぎゅうっと強く抱きしめられる。 その心地は悪くない……というか良すぎる。 「あったかい」 「うん」 「俺の名前、呼んで………ここには何もこわいものは無いよって唯が俺に教えて」 「玲緒、好きだよ」 「うん、俺も唯が好き」 「ここだけじゃなくて、もうどこにもこわいものはなくなるから、大丈夫」 「ほんと?」 「あぁ、ただし明日良い子になって組で留守番ができたら…だけどな」 そう言って唯は俺を見て微笑んだ。 お留守番できるよ、と言って微笑み返すと唯は安心したように良い子だなって頭を撫でてくれた。

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