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第300話
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「れーお、そろそろ寝よ」
「ん〜」
「寝不足になる」
「あともう少し…」
自分の家から唯の家に帰ってきて、お風呂に入ってご飯を食べた。
それから唯に抱っこされながらテレビを見て、少ししたら勉強を始めた。
そして現在時刻は10時30分。
少し早い就寝を促され、あとすこし…ともう何回、唯に言っただろうか。
唯もそんなに眠たければ先に寝ててもいいのに…と思いつつ、シャーペンを握る手を休むことなく動かしていた。
「もう終わり、寝る」
目の前にあったテキストを取り上げられ、そのままかばんに仕舞われてしまう。
唯はちょっぴり無表情気味。
「ごめん…もう寝るね」
そんな唯の言葉に従うように洗面所で歯を磨いてベッドに入った。
すぐ、唯も隣に入ってきて向き合う形になる。
今日は少しだけ疲れた…。
お昼寝もしたけどすぐに眠れそうだなぁ。
そんなことを考えながら目を閉じた。
「玲緒」
「なに?」
「手、出して」
唯に名前を呼ばれて閉じた目をもう一度開け、両手を出した。
小さくてあたたかい色の光の下。
薄らと唯の手に包まれる俺の手。
「みて」
「なに…?……っ」
俺の左手に輝くのは、新しい指輪。
いつも肌身離さず持っている前にもらった指輪とは違う。
本体はシルバーで下の方にブルーのラインが入っている。真ん中か分からないけど石が一つ目立たない程度に埋め込まれていた。
とても綺麗な指輪だ。
「なに、これ……」
「本当は玲緒が高校卒業したら渡そうと思ってたんだけど…予定が早まった」
「…なに、どういう意味?」
「結婚しよう、玲緒」
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