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第322話

「綺麗な時計だな……ありがとう、嬉しい」 「良かった!」 お店で見かけた時に1番気に入った時計。 値段は、バイトをしてない俺にはちょっと高かったけど唯からしたら端金かもしれない。 お金はちょっぴり兄貴に貸してもらった。 ちゃんと大学でバイトして返すつもりだ。 「唯がいつもしてるやつより多分かなり安いと思うけど…」 「そんなことない。これからは毎日こっちをつける」 そんな唯の一言が嬉しくてたまらない。 プレゼントできて良かった…。 「大事にする、ありがとな」 そう言って唯は俺の髪の毛をぐしゃぐしゃになるまで撫でてくれた。 「ケーキ食べよ!」 「あぁ、そうだな」 それからいちごのショートケーキをお腹いっぱいになる寸前のところまで食べた。 「玲緒、お風呂入ってきな。もう寝そう」 「うん」 寝るわけないよ、。 だって久しぶりのお泊まりだし。 そんなことを思いながら俺は急いでお風呂に入った。 ** 「出たよ〜唯も入れば?」 「そうだな」 唯はリビングで雑誌か何かを読みながら座っていた。 平常を装って声をかける。 「先に寝ててもいいぞ」なんて言われて、寝るわけないじゃん、と心の中で返事をしたけどもちろん聞こえることは無い。 準備、してみよう…。 ** 「変じゃないかな………」 初めてのことだから自分ではよく分からない。 ものすごく恥ずかしくて、もうやめてしまおうという気持ちと誕生日だから、という気持ちが戦っている。 「…玲緒?」 寝室のドアが開く音がして、そちら側をみると髪の乾いた唯が立っていた。

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