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第5話

「ひっ、ぅ…ぐ」 なんだか涙が溢れてきた。 声を抑えるように服で口を覆う。 辛そうなんて言われたの久しぶりだなぁ 「おれ、よわっく、なった…か、なぁ」 そしてまた無理に笑ってみる。 「で、何があったんだ?」 ソファの上で泣く俺にそっとタオルを渡してくれた月宮さん。 「しつれんっ、して…っ」 「あぁ」 「かなわないってわかって、った、けど…やっぱ辛く、て」 「…なんで叶わないって?」 「男、だったっ…おれのっあにき…っ」 月宮さんは俺の頭を撫でてくれて「少し落ち着け」って笑ってくれた。 それから少し休んでまた話始めた。 「兄貴はすごく優しくて…いい人だったんですよ、だけど俺にはチャンスなんかなくてずっと、ずっと苦しかった。誰にもいえなくて寂しくて悲しくて…ほんと、苦しかったなぁ」 「…頑張ったんだな」 「だけどこの前、彼女さん連れてきて…悔しいけど2人、とってもお似合いだったんですよね」 「…」 「もう俺嫌になって、死にたくてケンカばっかして…だけど殺してくれるようなすごい奴はいなかった」 「…」 「俺は兄貴に代わる人を見つけられるわけでもなくて、兄貴にことを忘れられない、なんか…辛い」 「…」 「ねえ月宮さん、俺を殺してくれますか?」 「殺せない…お前は俺によく似てる」 「えへへ、断られちゃった、」 「もう喧嘩はするな」 「っ!じゃあっ、俺はどうやって生きていけばいいの!?…もういっそ殺してよ…」 気づけば月宮さんに掴みかかっていた。 ケンカをするな、なんて俺にとっては気持ちの軽くする場所を否定されたようで無性に怒り?が湧いてきた。

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