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第26話

ここで俺が忘れたって言ったら唯は俺から離れていっちゃうの、かな…? もう少し、あと少しだけ 一緒に、隣に、いさせて 「まだ、かな…よく、分からないけど」 さっきとは違う意味でバクバクと高鳴る心臓の鼓動を気付かれないように、そっと唯の方を見つめた。 その言葉を聞いた唯は少し悲しそうな笑顔で、そうか、って言って俺の頭を撫でてくれた。 嘘をついてしまった、という罪悪感を感じながら唯の手を握っていた。 お風呂から出ると唯がタオルで俺の髪をふいてくれた。 唯の香りがするふわふわのタオルに包まれていて、とても気分が良くなった。 「ん〜」 「動くな」 だけど髪を触られるのはあんまり好きではなくて、思わずいやいやと首を振ってしまう。 「また会いにきてもいい?」 「当たり前だ」 そう言ってくれたのが嬉しくて唯に抱きついた。 それから午後はテレビを見たりしてごろごろしていた。 唯も仕事は終わったらしくてずっと俺の隣にいてくれた。 あぁ幸せだなぁ 「…お…玲緒、」 唯が俺を覗き込んでいる。 「あ、ゆい…って俺ねてた?」 唯が小さく頷く。 「そろそろ時間だ…帰らないとだろ?」 「そ、だね…ん〜抱っこ〜」 唯は俺を抱き上げて膝の上に座らせてくれた。 さっきもしてくれたこの体勢が玲緒は好きになっていた。 落ち着くっていうか安心する。 唯にくっついていられる俺の特等席。 俺は唯に抱きつき、首元に顔を埋めた。 あったかい、良い匂いがする。 「送って行く」 「え〜いいよ〜、俺歩けるし」 「そういうことじゃない」 唯は呆れたように俺を見てきたけど、俺なにか変なこと言った?と、少し不安になった。

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