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第28話

これは家に入る前、いつもやっちゃう癖でなかなか抜けない。 「ただいま〜!」 出来るだけ明るい声をつくっていつもより重く感じる扉を開けた。 そしたらドタドタと足音がして、いつもは絶対出迎えになんてにこない葉月が出てきた。 「お前っ!なんで家に帰ってこなかったんだよ!ふざけんな!どこ行ってたんだよっ!」 「ごめんね」 こういう時は謝ることしかできない。 だって何を言っても理解してくれないって分かっているから。 そう言って、ニコニコとした作り笑いを顔に貼り付けた。 「電話にも出ないでっ、マジ生意気っ!本当お前と生活するとかもう無理っ」 そして言いたいことを一通り言ったのか葉月はリビングに戻っていった。 「頑張れ、俺」 顔をパンパンと叩き気合を入れなおす。 俺も後を追うようにリビングへと向かった。 「葉月、ごはんは?」 キッチンで支度をしながら聞いてみる。 「今はお前の作った飯なんか食べたくない」 俺の方も見もしないでそう言われた。 分かってたけどちょっと傷付くなぁ、なんて… エプロンを外してリビングを出た俺は明日の用意をしようと自室へ行った。 唯の部屋とは違うけど、ここも俺の安心できる場所。 通学かばんからテキストを取り出し、 土日やってなかった分の課題を広げる。 「うっ、」 分かってはいたが、この量は過酷だ。 死ぬ気で取り掛かろう…。 そう意気込んでペンを持った。

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