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第29話

「ふぁ〜」 時計を見て、気付けば深夜の2時を回っていた。 「やっば、寝なきゃ」 やっと終わった課題を通学カバンの中に放り投げ携帯を手に布団に入った。 部屋の明かりを消してベッドの手元の明かりをつける。 玲緒は明かりがないと眠れない。 それがなんでかは玲緒にも分からなかった。 体を横にして目を閉じていたら突然携帯が震えた。 驚いてすぐ見てみると唯からだった。 こんな時間まで起きてるのか… 『今度一緒に出かけたい』 短文で愛想の無い文だったけど、玲緒にはとても愛おしく思えた。 一度寝かせた体を起こして 『いいよ!どこにする?』 と、前のめりになりながらすぐに返信した。 すると今度は電話がかかってきた。 「はい」 『俺だけど…こんな時間まで起きてるのか』 いつもより落ち着いている声はきっと疲れているからだろう。 「今日はたまたま、さっきまで課題やってたんだよ〜」 『…早く休め』 「唯こそ!こんな時間まで仕事?」 『そんなとこだ。それよりさっきのメールの件、どこに行きたいか考えておけよ』 やっぱり仕事だったんだ…。ヤクザの仕事も大変そうだなぁ 「え、俺が考えていいの?唯が行きたいとことか…」 『俺はよく分かんないから任せる』 「もう、じゃあ俺考えとくよ!…ね、唯は俺のこと好き?」 『…あぁ、好きだよ』 電話越しに聞こえる吐息混じりの声に玲緒の心はバクバクと高鳴った。 「ふふっ、嬉しいなぁ」 『さっさと寝ろよ』 「分かったよ〜、おやすみなさい」 『おやすみ』 胸の奥が温かくなるような感覚に襲われた。 唯との電話で玲緒は幸せな気持ちになって眠りについた。

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