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第32話
そして迎えた木曜日の放課後。
スキップで歩く翔を先頭にショッピングモールへ向かっていた。
ショッピングモールに行く途中、街がいつもよりそわそわとしている感じだった。
だけどケンカをしたいと思うほど気持ちにもやもやがあったわけでは無かったし、何より今から2人と遊びに行くんだから2人を不安がらせないように気づかない振りをした。
すっかり癖になったLINEのチェックをするべく携帯を見ながら歩いていると少し前の方で翔の声が聞こえた。
「わっ、ごめんなさい!」
どうやら人にぶつかったらしい。
俺と夏樹もすぐに追いつき、翔と一緒にぶつかった相手に謝った。
「チッ...次からは気をつけろよ…...ちょっと聞きたいんだけど、レオ、ってやつ知ってるか?」
俺たちが謝ったガラの悪い男は少々苛立った様子で、そう聞いてきた。
「れ、お?」
と、翔が聞き返す。
それは俺の名前。
だけどレオ、なんていう名前は現代の日本で珍しくない名前だ。
見覚えのない顔だし、きっと俺じゃない
「あぁ、金髪で高校生とだけ聞いてる」
いや完璧俺じゃん。
「すみませんが知りません。俺たち用事があるのでこれで失礼しますね」
一切表情を変えずに、そう告げたのは夏樹だった。
動揺する俺と翔をひっぱりながら夏樹は少し早歩きで歩いていた。
「おい、何やってんだよ…怪しまれてるぞ!ただでさえお前金髪でバレやすいのに…」
夏樹は小さい声でそう言った。
俺もこの時だけは自分の光り輝く髪の色を恨んだ。
街にはいつもより人が集まっていて紛れやすいといえば紛れやすい...のに俺のこの頭のせいで台無しだった。
「やっば、...追われてる?」
後ろは見ずに夏樹にこっそり聞いた。
「そうだな」
「俺っ、ちびりそう…」
泣きそうになる翔をなんとかなだめ、落ち着かせながらショッピングモールに着いた。
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